世界で広がる洋上風力、日本での導入拡大に必要なものとは?:自然エネルギー(2/2 ページ)
日本風力発電協会(JWPA)が、国内における洋上風力の導入推進に向けた提言を取りまとめた。今後、洋上風力を円滑に導入するために必要なことはなにか? 同協会の理事である加藤仁氏が語った。
日本ではどれくらい導入できるのか?
こうした流れの中で、加藤氏は国内の洋上風力発電について「毎年1〜2GWの継続的な導入目標を置いてもらうことで、産業界も安定して今後のビジネスプランを作れるようになり、新しい産業が生まれることになる。それにより、国内でブレードの製造や設置するときに用いるSEP船の造船などにもつながることも期待できる」と指摘する。さらに「再生可能エネルギーは、従来の電力の代替にはならないという声が多いが、洋上風力発電は7〜8MWクラスと規模が大きいことから、エネルギーセキュリティの問題を解決でき、同じくCO2削減にも役立つ」と述べた。
国内に洋上風力発電を普及させるために、「政府の安定した政策、明確な導入目標が必要だ」(加藤氏)として、JWPAでは国による意欲的で明確な導入目標の設定について提言している。具体的な数値として2030年までに洋上風力10GW(着床式主体)導入(2050年時点で着床式・浮体式併せて37GW)を要望している。この目標を実現するためには、一般海域の利用に関する法整備、系統接続の担保、港湾の整備、セントラル方式(入札)に向けた環境整備などが必要となるという。
日本の一般海域における洋上風力発電のポテンシャルは、JWPAによると、着床式だけでも全国合計で91GW程度あると見込んでいる。その場所は風力7メートル以上、水深が40メートルまで、100MW以上の設備を設ける最低限の面積である20平方キロメートル以上、など条件がそろったエリアであり、そのうちの10GW分の場所を政府に導入目標区域に設定してもらうことを要望しているものだ。
一般海域の利用については、洋上風力発電は長期・大規模に投資となるために、その投資判断においては海域の利用権について明確な法令上の根拠が不可欠となり、早急に整備することが重要となる。このうち海洋占用許可については、占用期間は商業運転25年に建設・撤去期間の数年を加えた期間を設定することが必要とする。占用期間後の撤去については海底面下の基礎などについては、欧州では基礎の残置(部分撤去)が許容されていることから、日本でも同様の扱いとなることを求めている。系統接続の確保に関連しては、「日本版コネクト&マネージ方式」(既存系統を最大限活用する手法)のルール確立および適用の具体化を進める。
入札でのセントラル方式については、「洋上風力を導入する究極の入札方式」(加藤氏)と位置付ける。セントラル方式とは、漁業組合との交渉や環境アセスメントの実施などを政府が行い、発電事業者は施設の建設だけを中心に、完全な競争原理を取り入れて行う方法。加藤氏は「国がデータを整備したり、準備したりすることが必要となるが、欧州でコストダウンが進んだ要因はセントラル方式の導入にある」と話す。このセントラル方式の本格導入後に、洋上風力発電の導入ペースが大幅に加速される環境が整った段階で、入札などの価格競争の仕組みを導入してコスト削減につなげることで、JWPAでは将来的に発電コスト8〜9円/kWh(LCOE、均等化発電原価)の達成を目指している。
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