再エネによる地域事業創出へ、企業と自治体のマッチング図る新協会:自然エネルギー
再生可能エネルギーを基軸とした持続可能なコミュニティの実現に向けて、新たな協会が設立された。企業と自治体の連携により地域事業創出を目指す、日本サステイナブルコミュニティ協会だ。
日本サステイナブルコミュニティ協会(JSC-A)は、企業と自治体のマッチングを図り、再エネによる地域事業を立ち上げていくプラットフォームとしての役割を果たす。発起人は、三井物産フォーサイト、洸陽電機、アミタホールディングスの3社。元岩手県知事・元総務大臣で東京大学公共政策大学院 客員教授の増田寛也氏、東京工業大学 特命教授・先進エネルギー国際研究センター長の柏木孝夫氏、名古屋大学 特任准教授の杉山範子氏が共同代表理事を務める。
増田氏は協会設立の背景について、「自治体が地域で再エネ事業を展開したいと考えたとき、これまではある種偶然の出会いによって、どこかの企業と結びついて回していくというケースが多かった。企業からみても、どの自治体にどうアプローチしていったら良いかが見えづらかった。そこで、自治体サイドと企業サイド、双方が会員となって相談しあえる窓口的な協会が必要だろうということから当協会を立ち上げた」と話す。柏木氏も、「重要なのは地域の特性を生かせるような再エネビジネスを実際につくりだしていくことだ」と協会設立の狙いを語る。
持続可能な地域を目指し、業種を超えた企業が集結
設立にあたり、会員に名を連ねる企業は、発起人3社のほか、NECキャピタルソリューション、パナソニック産機システムズ、三井住友ファイナンス&リース、三洋貿易。再エネ業界だけでなく、メーカー、エンジニアリング、コンサルティング、ファイナンスなど、多様な業種から参加している。
発起人の1人であるアミタホールディングスの取締役最高戦略責任者・唐鎌真一氏は、次のように述べている。「まずは会員企業7社で、事業構想・構築・実践のプロセスを一気通貫で実行できるプラットフォームを構築させていただきました。現時点では地域に必要なエネルギーをつくる技術や知見のある企業、金融面から支援いただく企業、地域循環のループを構築支援する企業が中心ですが、今後はより多くの企業に参加いただき、地域のあらゆる課題に応えられる実践型の協会に発展させていきたいと考えています」。
同じく発起人である洸陽電機の代表取締役社長・乾正博氏もこう話す。「持続可能な社会を形成していくためには、地域ごとの自立、経済や生活の循環が必要です。ですから、特定の業界のためだけの協会ではなく、自治体・地域目線の団体にしなければならないと考えました。自治体・地域には、一般に情報やリソース(人材、技術、経験など)が少ないといわれていますから、まずはその部分を埋める役割を担いたいと思っています」。
事業構想策定から調査・実行までサポート
日本サステイナブルコミュニティ協会の活動は、大きく分けて2つある。第一は、地域エネルギー事業について検討したいと考える自治体に対し、地域資源の賦存量やエネルギー消費量に基づく事業構想を策定し、調査、実行までをトータルにサポートすること。そこには、ファイナンス組成支援や人材支援も含まれる。
第二は、エネルギーを基軸とした持続可能なコミュニティの実現に向けて、幅広い啓蒙活動を行っていくこと。当面は、関係省庁や自治体関係者・有識者らを講師とするシンポジウムを2カ月ごとに開催するということだ。同時に、大学や研究機関との連携を図り、随時、政策提言も行っていく。
協会では、こうした活動の効果として「自立型地方創生の実現」を挙げる。具体的には、次の3つだ。
- 地域資源循環(エネルギー/食料自給力)
- 地域経済圏の確立(お金が域内で循環/新たな雇用の創出)
- 持続可能コミュニティ(人口減少の歯止め/身近な安心・幸福)
共同代表理事の柏木氏は述べている。「山林地域にはバイオマスがありますし、風況に恵まれた地域には風力発電、日照が良いところは太陽光が合います。従来のエネルギーは大規模集中型一辺倒でしたが、これからは分散型へシフトしていく時代になります。農山村がエネルギーの供給産業を担うようになれば、エネルギー多消費地域から農山村へのキャッシュの流れも生まれ、地域の経済成長も促されます。そうした動きは、日本全体の活性化にもつながっていくはずです」。
日本では地方の過疎化や地域経済の低迷により、都市と地方の格差拡大が加速している。エネルギー問題とともに、こうした日本特有の課題を解決する手段としても、再エネによる地域事業創出には大きな意義が認められる。日本サステイナブルコミュニティ協会の取り組みに期待したい。
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