EV化の波は二輪にも、電動バイクの最前線:電気自動車(2/2 ページ)
「東京モーターサイクルショー」では、モーターとバッテリーが動力源となる電動バイクの存在感が強まっていた。スクーターからレースマシンまで、電動バイクの“現在地”を紹介する。
電動バイクでマン島TTレースに挑む無限、クラス5連覇を狙う
ホンダ車のアフターパーツなどの開発・販売を手掛ける無限(M-TEC)は、2018年マン島TTレース(2018年5月26日〜6月8日)のTT ZEROクラスに参戦するレースマシン「神電七(しんでん なな)」を発表した。
マン島TTレースは、イギリスのグレートブリテン島とアイルランド島に挟まれたマン島の公道を閉鎖して開催される、世界的に有名なバイクレースの1つ。神電七が参戦するTT ZEROクラスはCO2を排出しないバイクのみ参戦できる、事実上電動バイクのためのクラスとなる。バッテリー容量の制約から、1周約60.7kmのコースを1周回し順位を競い合うため、1周回でバッテリー内の電力を“使い切る”パワーマネジメント技術が重要となる。
無限は2012年よりTT ZEROクラスに参戦しており、現在4連覇中。2018年の同レースも5連覇を狙うとしており、TEAM MUGEN監督の宮田明広氏は神電七では「カウル形状変更によるエアロダイナミクスの改良、モーター・インバーター制御のアップデート、バッテリーの改良」を行ったと紹介した。
テストライダーを務める宮城光氏は、神電七のライディング感覚について「面白い」と太鼓判を押す。「インバーターを含めたコントロールユニットの制御を高めることによって、バッテリーを最大限に使い切る能力」(宮城氏)を年々改善してきたとして、「スロットル開度に応じた、自分が欲しいパワーデリバリーがしっかりと出ているかどうか、さらに言うとその質感」(宮城氏)が、神電七では特に優れていると評価した。
神電七は油冷式の三相誘導電動機(ブラシレスモーター)を採用し、最高出力は120kW(キロワット)、最大トルクは210Nm(ニュートンメートル)を発揮。ラミネート型リチウムイオンバッテリーの出力電圧は370Vで、水冷式インバーターに電力を供給する。総重量は248kgと、バッテリー搭載のためレースバイクの中では重量級の部類に入るが、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製モノコックフレームにより重量増を抑制している。
神電七に搭載されるモーターおよびインバーターは、同社が開発した専用品となる。開発を担当する同社担当者は「汎用モーターでは動作温度がボトルネックとなっており、モーター内部の構造変更、油冷の採用や冷却管路を見直した専用モーターにより、動作温度を下げることができた。インバーターを含めたコントロールユニットは、宮城氏とのコミュニケーションによりハードウェアとソフトウェアの両面から調整を施した」と工夫点を語った。
また、上記で紹介した2車種以外にも、同ショーではイタリアメーカーであるADIVA製の屋根付き電動三輪アーバンコミューター「AD1-E」と「AD-Cargo」、ヤマハ発動機製の電動トライアルバイク「TY-E」のワールドプレミアが行われ、多くの電動バイクが来場者の関心を引きつけていた。
今回紹介したこれらの技術が花開き、電動バイクが一般ライダーの要望に応える存在になることを期待している。
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