東京電力が電力小売りベンチャー設立、再エネのP2P取り引きも:電力供給サービス
東京電力ホールディングスが家庭向けの電力小売り事業を手掛けるベンチャー企業を設立。電力だけでなく太陽光発電や蓄電池の販売も計画するなど、既に東電HD傘下で電力小売り事業を手掛ける東京電力エナジーパートナーとは異なる特色を打ち出している。
東京電力ホールディングス(東電HD)は2018年3月、電力小売り事業を手掛けるベンチャー企業TRENDE(トレンディ、東京都千代田区)を設立し、家庭向けの電力販売を開始したと発表した。電力だけでなく太陽光発電や蓄電池の販売も計画するなど、既に東電HD傘下で電力小売り事業を手掛ける東京電力エナジーパートナー(東電EP)とは異なる特色を打ち出し、顧客開拓に取り組むという。
トレンディの資本金は4000万円で、東電HDが100%出資。代表取締役には日本および米国で20社以上のベンチャー企業立ち上げの経験を持つジェフリー・チャー氏、東京三菱銀行(現・東京三菱UFJ銀行)を経て、フィンテック分野やブロックチェーン分野での起業経験を持つ妹尾賢俊氏が就いた。「シンプルでわかりやすい」をコンセプトに、新しい商品・サービスの開発や、デジタルマーケティングの手法を活用し、効率的・効果的な事業運営に取り組むという。
同社が販売する電気料金プランの名称は「あしたのでんき」。シンプルな料金体系を特徴としており、一般家庭向けの「標準プラン」と、電力使用量の多い家庭向けの「たっぷりプラン」の2種類を販売する。
標準プランは基本料金が0円で、月々の電気料金は電力量料金だけで決まる。東京電力管内での料金単価は25.50円/kWh(キロワット時)。契約電力40A(アンペア)、月の電力使用量が400kWhの家庭の場合、東京電力の従量電灯Bを契約する場合と比較して、毎月496円割安になるとしている。
もう1つのたっぷりプランは、月間の使用電力量が700kWh以上の家庭を対象としている。基本料金が3000円で、東京電力管内での料金単価は21円/kWh。契約電力60A、月の電力使用量が700kWhの家庭の場合、東京電力の従量電灯Bより料金が月間3011円安くなると試算している。
標準プラン、たっぷりプランの提供地域は東京電力、東北電力、中部電力、関西電力、中国電力、九州電力エリア。ともに、契約の受け付けはインターネット窓口のみとなる。
こうした電力販売に加え、今後は太陽光発電システムや蓄電池の提供も計画する。さらに、太陽光で発電および蓄電した電力を、他の家庭と直接売買できるP2P(ピア・ツー・ピア)の仕組みを構築するなど、新しい電力サービスの開発にも取り組むという。
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