燃料電池で動く“船”、ヤンマーらが実海域で実証:蓄電・発電機器
ヤンマーらが燃料電池で動く船の実証試験を実施。搭載する燃料電池システムや蓄電池システムに求められる安全要件の妥当性を確認することができたという。
水素で発電する燃料電池を、船に活用する取り組みが進んでいる。ヤンマーは、海上・港湾・航空技術研究所の海上技術安全研究所(海技研)および日本船舶技術研究協会とコンソーシアムを組み、国土交通省より受注した「水素燃料電池船の安全ガイドライン策定のための調査検討事業」の一環として、燃料電池を搭載した実船の試験を2018年2〜3月にかけて実施した。
同コンソーシアムでは、国土交通省が水素社会実現に向けて2015年度から3年計画で取り組んでいる「水素燃料電池船の安全ガイドライン策定のための調査検討事業」で、水素燃料電池船の安全ガイドライン案の検討を行ってきた。最終年度となる2017年度は、燃料電池の塩害対策や動揺試験などのこれまでの基礎試験で得られた成果に基づき、ヤンマーが試作した60kW(キロワット)級の純水素燃料電池システムを搭載して実船試験を実施したもの。今回、同試験により得られた知見から燃料電池船の安全要件を取りまとめ、「水素燃料電池船の安全ガイドライン」策定に向けて国土交通省に提出している。
60kW級舶用燃料電池システムは、ヤンマーと豊田通商の共同研究によりカナダのBallard Power Systems Inc社製のモジュールを搭載して製作した。実船試験は、ヤンマーと海技研が主体となり、ヤンマー製の固体高分子形燃料電池モジュール1基、渦潮電機製の容量60kWh(キロワット時)のリチウムイオン電池システムを海技研が管理する実験船「神峰」(総トン数17トン)に搭載。広島県尾道市の海域で実証を行った。その結果、燃料電池システムや、燃料電池船に搭載する蓄電池システムに求められる安全要件の妥当性を確認することができたという。
関連記事
- 日本初の燃料電池船が完成、船も水素でCO2フリーに
日本初の水素で動く船が完成した。環境省の実証事業として戸田建設などが開発した燃料電池船で、長崎県五島市の椛島沖で2015年度末まで実証航行が行われる。再生可能エネルギーによる電力で生成した水素を利用して、CO2フリーな航行を実現する。 - 水素で走る船が東京湾に、燃料電池船の2020年実用化を目指す
水素で動く燃料電池船の実運用を目指す動きが進んでいる。東京海洋大学とNREG東芝は、2016年10月上旬から水素で動く燃料電池船の実証試験を開始した。実証の成果は国土交通省が2020年をめどに策定を進めている燃料電池船のガイドラインにも活用される予定だ。 - 船の上で太陽光発電、“発電する帆”で環境負荷を下げる
船の上で太陽光や風力から電力を作り、航行のエネルギーに利用することで環境負荷を低減するというユニークな取り組みが進んでいる。船舶用システムなどを手がけるエコマリンパワーが久福汽船と進めているプロジェクトで、実際の船舶に太陽光発電システムを組み込んだ特殊な帆などを設置し、発電した電力を運航に活用して環境負荷の低減を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.