青森県八戸でバイオマス発電、地域の間伐材や鉄道林を活用:自然エネルギー
青森県八戸市にバイオマス発電所が完成。県内で発生した間伐材や鉄道林を中心に燃料として活用し、約2万7000世帯分の年間使用量に相当する電力量を発電する計画だ。
住友大阪セメント(東京都千代田区)が住友林業、JR東日本と共同で建設した「八戸バイオマス発電」(青森県八戸市)が4月1日、営業運転を開始した。燃料は県内の間伐材や鉄道林を中心に利用する方針という。
同発電所は八戸港付近の工業用地に建設。流動層ボイラー、蒸気タービン発電機などの設備を導入した。発電端出力は12.4MW(メガワット)で、約2万7000世帯分の年間使用電力量に相当する発電量を見込んでいる。発電した電力は「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」を利用して売電する。
燃料の木質チップは、主に青森県三八・上北・下北地域の間伐材や周辺鉄道沿線の鉄道林などを地元関係者の協力を得ながら集荷する。また、一部パームヤシ殻も使用する予定で、住友林業100%子会社みちのくバイオエナジー(八戸市)から全量を調達する。年間の使用燃料予定は約13万トンを予定し、主に林地未利用材を使用したエネルギー事業の実現を目指す。
住友大阪セメントグループは、セメント製造用電力の安定化のため、セメント工場に自家発電設備を導入し、電力の自給率向上に努めてきた。グループ5工場全てにセメント生産プロセスで発生する高温ガスを再利用し発電する廃熱発電設備を採用するとともに、栃木工場(栃木県佐野市)、赤穂工場(兵庫県赤穂市)、高知工場(高知県須崎市)には火力発電設備を導入し、同3工場における電力自給率は100%(発電設備のメンテナンス時を除く)を達成しているという。また、栃木工場の自家発電設備は、木質チップなどのバイオマス資源を主燃料として利用するバイオマス発電設備となっている。赤穂、高知工場でも石炭の補助燃料としてバイオマス燃料を積極的に活用している。発電した電力は外部にも供給し、その供給量は全社で年間約95万MWh(メガワット時)に及んでいる。
今回の事業は、セメント工場敷地以外で他社とのパートナーシップのもと発電事業を行うという点で、住友大阪セメントグループとして初めての事業となる。なお、バイオマス発電設備から発生する燃料の焼却灰は、グループ会社の八戸セメント(八戸市)でセメント製造用原料として再利用する計画だ。
関連記事
- 「竹はバイオマス発電に不向き」を覆す、日立が燃料化技術を開発
日本国内に豊富に存在するものの、ボイラーで燃焼させると炉内に「クリンカ」という溶岩を生成してしまうなどの特性から、バイオマス発電の燃料には不向きとされている竹。日立はこうした竹の性質を、一般的なバイオマス燃料と同等の品質に改質する技術の開発に成功した。 - 雑草で再エネ発電を実現、電力と熱は農業に生かす
名城大学が雑草からメタンガスを取り出し、そのままガスエンジンで発電する手法を開発。放置された稲わらなどから発生し、地球温暖化にもつながるメタンガスを有効利用する手法として期待される。 - 主燃料は県内の未利用材、愛媛県初の木質バイオマス発電所が完成
愛媛県松山市に県内初となる木質バイオマス発電所が完成。主燃料として県内の未利用材を活用していく方針だ。 - 青森県で32MWの風力発電が稼働、1.5万世帯分の発電量で地域貢献も
日立キャピタルのグループ会社であるよこはま風力発電は、青森県横浜町に32.2MWの「横浜町雲雀平(ひばりたいら)風力発電所」を建設し、商用運転を開始した。年間発電量は、一般家庭の約1万5000世帯分に相当する6万8000MWhとなる予想だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.