トヨタが燃料電池車の普及へ設備投資、スタックと水素タンクを増産:電気自動車
トヨタは燃料電池車の普及に向け、基幹部品となる燃料電池スタックと高圧水素タンクの生産設備を拡充する。2020年以降をめどに、FCVの生産台数を現状の約10倍となる3万台に引き上げる方針だ。
トヨタは2018年5月、燃料電池自動車(FCV)の普及に向け、FCVの基幹ユニットとなる燃料電池スタック(FCスタック)と燃料の水素を貯蔵する高圧水素タンクの生産設備を拡充すると発表した。
同社は2020年頃以降グローバルで年間3万台以上の販売を目指している。今回の生産設備の拡充で、現状の年間3000台レベルからひと桁増となる生産レベルに対応する狙い。さらに、2020年代からのFCVのラインアップ強化による販売増を見込んでいる。それに加え、2017年2月から東京都に販売を開始した燃料電池バス(FCバス)や、豊田自動織機が2016年秋から販売を開始した燃料電池フォークリフトなど、FCスタック・FCセルや高圧水素タンクの活用が拡がり、これらの供給を十分に支えられる生産体制を整備する。
FCスタック生産設備は、愛知県豊田市の本社工場敷地内に、延べ床面積約7.0m2(平方メートル)、8階建ての新たな建屋を建設。高圧水素タンクは愛知県みよし市の「下山工場内」に専用ラインを新設する。
新設設備は、2015年10月に公表した「トヨタ環境チャレンジ2050」の中で掲げた「工場CO2ゼロチャレンジ」に向けた取り組みの一環として、生産段階でのCO2排出量の徹底した削減を目指した設備とする予定だ。2020年ごろから稼働開始を目指し、今後、設備の詳細を詰める。
また、トヨタは、グローバルでのFCV販売拡大のため、海外での販売国・地域を拡大、日本では現在の4大都市圏中心からさらに対象地域を拡げていくことを検討している。
同社はFCV「MIRAI」を、2014年12月に日本で発売、2015年秋からは米国・欧州でも発売し、年間の生産は、2015年は約700台、2016年は約2000台、2017年以降は約3000台と、年々増加させてきた。そして、将来のFCV普及のためには、2020年代には本格的な普及期に入ることが必要だと考え、2020年ごろ以降、MIRAIなどのFCVやFCバスなどの販売台数を、グローバルで年間3万台以上に引き上げることを目指している。
現在、MIRAIは、日本・米国・欧州9カ国、計11カ国で販売している。今後、オーストラリア・カナダ・中国・アラブ首長国連邦(UAE)でMIRAIの走行実証を行い、FCVの需要性把握や水素ステーション整備促進に向けた取り組みに協力するなど、将来のFCV販売国・地域の拡大に向けた環境整備を進める。
日本では、2020年以降をめどに少なくとも月に1000台レベル、年間では1万数千台程度の販売を目標としており、販売地域は、現在の4大都市圏中心からさらに対象を拡大する。FCバスは、東京都に2017年2月に2台、2018年3月に3台販売し、今後、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、100台以上の販売を目指している。
関連記事
- リチウムを超える「アルミニウム」、トヨタの工夫とは
電気自動車に必要不可欠なリチウムイオン蓄電池。だが、より電池の性能を高めようとしても限界が近い。そこで、実質的なエネルギー量がガソリンに近い金属空気電池に期待がかかっている。トヨタ自動車の研究者が発表したアルミニウム空気電池の研究内容を紹介する。開発ポイントは、不純物の多い安価なアルミニウムを使うことだ。 - アンモニアと燃料電池で直接発電、IHIが1kW級の発電に成功
IHIはアンモニアを燃料として直接供給する固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムを開発し、1kW級の発電に成功した。 - 2050年のエネルギー、水素が世界の2割を締める可能性――水素協議会が報告
世界の自動車、エネルギー関連企業などが参加するHydrogen Councilが報告書を公表。2050年までに世界のエネルギー消費量全体の約2割を水素が担う可能性があるとしており、そのCO2削減効果や経済効果などのメリットについても言及している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.