太陽光発電のトラブルにつながる雑草、知っておきたい代表種:基礎から学ぶ太陽光発電所の雑草対策(2)(4/4 ページ)
日本でも稼働から数年が経過する太陽光発電所が増える中、課題の1つとなっているのが雑草対策だ。本稿では太陽光発電に対し、さまざまなリスクやトラブルの原因となる雑草を、種類別に解説する。
知っておきたい雑草の区分と生育期間
次にご自身の太陽光発電所に生育している雑草が、どういった種類のものでどのような特徴があるのかを正しく把握するため、雑草の生育期間と発芽時期に関する基本的な知識について紹介したいと思います。
多種多様な植物を区分することは困難なことですが、ここではあえて一般の方がわかりやすいように努めつつ、われわれのような防除防疫業者との意思疎通が図りやすくなることを念頭に置き、まず2つの観点から雑草を分類してみます。
1.生育期間による分類
- 一年生植物……1年で世代を終える植物。春に発芽し、夏ごろに開花、結実して枯死します。
- 越年生植物……秋に発芽し、翌春ごろに開花、結実して枯死します。
- 多年生植物……冬や夏に地上部が枯れた場合でも地下部の茎が生存し、その後の好適な条件で萌芽・再生します。繁殖特性から単立型、地表ほふく型、地下拡大型に分けられ複数年にわたって生存します。発電所で問題になるのはこの種類が多いです。
2.葉の形状による分類
雑草を分類する中で、よく使われる言葉として「イネ科」と「広葉」表現する方法がよく使用されています。両方とも一年、越年、多年生植物が存在しています。
- イネ科……葉が細長く葉脈が葉の形状に平行して存在します。代表例は米の元になる稲、そして、本稿でも解説したカヤなどです。
- 広葉……葉が広く葉脈が網目状に存在する植物が多いです。代表例は本稿で取り上げた、セイタカアワダチソウやクズなどです。
発芽の条件・時期と生育期間
雑草が発芽・生育するには、3つの条件「光」「水」「温度」が合致する必要があります。どれか1つが欠けても生育はしません。また、発芽時期は、日本は南北に長い国土のため、地域や雑草の種類によって大きく異なりますが、一般的に平均発芽気温は17度位といわれています。
南部の温暖な地域では3月中旬から下旬、北部の寒冷地は6月ごろに発芽がはじまるといわれています。しかし、近年温暖化の影響で発芽の時期が早まっており、今年は3月中旬ごろの急激な気温上昇の影響か、例年より早いように思われます。
最後に、わかりやすく雑草の生育期間を下表にまとめてみました。表に記載したとおり、発電所で問題になることの多い多年生雑草は、秋には地表部は枯れてしまいますが、地下茎は枯れず休眠状態になっているのが分かると思います。
今回は以上です。次回は太陽光発電所の雑草対策として行われているさまざまな工法の中で、トラブルにつながりやすい、問題の多い工法について解説します。
著者プロフィール
増田幹弘(マスダ ミキヒロ)
野原ホールディングス株式会社 事業開発部 再生エネルギープロジェクト室長
太陽光発電アドバイザー、緑の安全管理士、「東京都農薬指導管理士」
大阪出身、近畿大学卒業。1999年、私費にて参加したエコに関する研究会にて、電気を庭に取付けた太陽光発電と自動車の大型バッテリーから、給湯は太陽熱を利用するなどの、今でいうゼロエネルギー住宅(奈良県)を視察し感銘を受ける。自宅をオール電化にし屋根には発電システムを取り付け、自宅エネルギー消費データを2年間記録、上記研究会にて発表。その後も省エネ、省資源についての研究を深め、建材の開発、リサイクルシステム、工場のエネルギー消費削減に大きく貢献。
2009年、野原産業(現 野原ホールディングス)に入社。2013年、事業開発部において八ヶ岳研修所の遊休地活用事業として太陽光発電プロジェクトを主幹。現在は、太陽光発電に関わる新事業として、第三者の視点からの太陽光発電設備の保守・点検(O&M)サービス「SUNSUN GUARD 20」を展開。豊富な知識と多様な事例、経験から、太陽光発電事業者向けセミナーにて講師も務める。「PV Japan 2018」(パシフィコ横浜)で、太陽光発電所の雑草対策に関する講演を出展者セミナーにて実施予定(6月20日、11時30分〜)
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