AIで燃料調整を効率化、火力発電の運用コストを1億円削減:IT活用
三菱日立パワーシステムズが台湾の火力発電所に導入したAIシステムの効果を検証。ボイラーの燃料調整を効率化することで、年間1億円程度のコスト削減を可能にしたという。
三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は、台湾公営の台湾電力が運営する林口(リンコウ)火力発電所に導入した人工知能(AI)技術を活用するボイラーの燃焼調整システムの改良により、最大で年間1億円程度のコスト低減を確認したと発表した。
今回の実証結果は、2017年春に運転を開始した同発電所の2号ボイラーで、新たにボイラー効率や補機動力などの経済性を考慮した燃焼調整機能を付加することで、複数プロセス値の最適化を目的とした燃焼調整機能を発揮させる改良により得られた。
このAIシステムは、火力発電所の運転最適化を支援するMHPSのデジタルソリューションサービス「MHPS-TOMONI」を構成する機能の1つで、試運転期間中の2016年度後半から稼働している。林口火力発電所では、同社が出力80万kW(キロワット)の石炭焚(だ)き超臨界圧火力発電設備のボイラーと蒸気タービンそれぞれ3基ずつの納入を手掛けており、2号機までが商業運転中だ。
燃焼調整は、元来はベテラン技師がプログラム実行時に設定する複数のパラメーター(指示事項)を調整することにより、排ガス特性、燃焼バランス、蒸気温度特性、ボイラー効率などのプロセス最適化を行っていた。今回は、林口火力発電所の2号ボイラーも運転開始から時間が経過して運転にも習熟したことから、その後のボイラー特性を学習させることにより、多様な炭種に対応した燃焼調整機能を実現した。
さらに、ボイラー効率や補機動力などの経済性に関わるプロセス値の変化を追加学習させたAIシステムに最適パラメーターを提案。その結果、AIが提案するパラメーターにより、さらに経済性改善効果を得ることにつながった。
同社はこのボイラーAIシステムの開発を通じて、ボイラー運転での大量・複雑なデジタルデータの解析による運転コストや保守管理コストなど発電コストの最適化、不適合予兆・早期検知などの機能を国内外の電力会社へ提供することを目指して開発を進めている。同燃焼調整システムは、現在開発に取り組むAIを活用した火力発電所向け運転制御システムの中核を担うシステムの1つとなっている。
MHPS-TOMONIのソリューションにはO&M(運転・保守)の最適化、性能向上、運用性改善の3つのメニューがある。MHPSは引き続き、精度の向上や適用機能の拡大などの高度化に取り組むとともに、得られた成果をMHPS-TOMONIが提供するデジタルソリューションの一部として、他の顧客にも提供する。
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