洋上風力の導入拡大へ期待、「バージ型浮体」が完成:自然エネルギー
日立造船がNEDOプロジェクトで開発を進め知恵た、新しい洋上風力発電の浮体が完成。福岡県北九州の洋上に導入し、性能の検証を開始する。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と日立造船が開発を進めてきた次世代浮体式洋上風力発電システムのバージ型浮体が完成した。
洋上風力発電は風車を支える基礎構造の形式により、海底に基礎を設置する「着床式」と、基礎を海に浮かばせる「浮体式」に大別される。NEDOは2011年度に浮体式洋上風力発電に関する基礎調査として、日本の海域で洋上風力が導入可能な海域面積を、離岸距離30km(キロメートル)、水深200m(メートル)までとして海域範囲を調査した。その中で、着床式と浮体式の経済性が入れ替わるとされる水深50mで区切った場合、浮体式は着床式に比べて約5倍の導入可能海域面積を有するとの結果を得た。洋上風力発電の導入を加速するためには、着床式洋上風力発電の導入に加えて、より広い海域に導入が可能となる浮体式洋上風力発電が必要となっている。
近年、国内外で2〜7MW(メガワット)クラスの浮体式洋上風力発電の実証研究が開始され、技術的な検証が進められているが、普及拡大に向けては、着床式洋上風力の発電コストと競合できる、さらなる低コスト化に向けた先進的な技術開発が不可欠となっている。
そこでNEDOは、浮体式洋上風力発電にとって比較的浅い水深50m程度から設置可能で、かつ一般的なセミサブ型浮体と比較して小型・軽量なバージ型浮体の開発を行う実証事業を進めている。
今回、日立造船株式会社堺工場で完成したバージ型鋼製浮体は、福岡県北九州港にえい航され、そこで風車を搭載する。その後、北九州市沖合約15kmの海域で響灘において係留および電力ケーブルの接続を行い、2018年夏ごろに実証機を設置し、同年秋ごろからの実証運転を開始する計画だ。実証では計測データによる設計検証や、浮体式風力発電システムの効率的な保守管理方法の技術開発などを行い、低コストな浮体式洋上風力発電システムの技術の確立を目指す。
なお、次世代浮体式洋上風力発電システムは、鋼製のバージ型浮体式構造物に2枚翼アップウィンド型3MW風車を搭載しており、スタッドレスチェーン(オフショア用の係留チェーン)高把駐力アンカー(浮体の位置を保持するアンカー)の組み合わせによる計9本の係留システムで係留し、厳しい気象・海象条件においてもシステムの安全性が確保される設計となっている。
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