太陽光発電の「設計ガイドライン」が改定へ、押さえておきたい要点は?:太陽光(3/3 ページ)
太陽光発電の構造的な安全性を確保するために、「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン」の改訂作業が進められている。野立ての太陽光発電システムは、何に留意して設計しなければならないのか? 「PVJapan2018」で、ガイドラインの策定に携わった奥地建産の高森氏が解説した。
実証試験を重ね、ガイドライン「改定」へ
設計ガイドラインの拡充に向けて、実証試験が進められてきた。主な試験内容は、「杭の支持力試験」「架台の耐風圧試験」「鋼材の曝露(ばくろ)試験」の3つ。日本各地の地盤や多様な気候風土を想定して、それぞれに詳細なデータが収集された。
実証試験の結果、杭の支持力については「粘性土における周面摩擦力は設計計算式を下回る」ことや「水平支持力は砂質土・粘性土ともに設計計算式を下回る」ことが分かってきた。このため、それぞれの発電所建設地において、実際の杭の支持力試験で確認することがますます重要となる。架台の耐風圧試験は、鋼製・アルミ製それぞれに、トラス構造、方づえ構造、自立柱構造などさまざまな試験体で実施している。この結果、接合部での滑りや破壊が多いことなどが改めて実証されたという。それぞれの環境における架台や杭の腐食性については、大気暴露試験と土壌曝露試験によって実証が進められている。
さらに、実証試験における今後の検討課題として、次の2項目が挙げられた。「メーカーが表示しているPVモジュールの耐圧性能は、許容応力度設計に用い得るものかどうかを確認すること」、「クランプ・スロット・長孔などを対象とした接合部の載荷試験を実施し、どの程度の耐力があるのかを詳細に把握すること」の2つだ。
2018年度中に予定されている設計ガイドラインの改訂には、上述の各種実証結果が反映されることとなる。高森氏によると、現在想定される主な改定内容は以下の通り。
- 被害事例の追加(土砂災害や水害、基礎の沈下または崩壊、架台の損傷等)
- 排水計画の追加
- 設計荷重の拡充(傾斜地での風速増加や地方自治体が定めた垂直積雪深等)
- 使用材料の明記
- 杭の許容支持力(試験結果と計算式の比較)や各種杭の特徴
- 架台の設計(基本構造形式の安定原理や部材設計、接合部の設計等)
- 腐食事例と腐食対策方法の追加
東京を皮切りに、8月より全国10カ所でセミナー
なお、2018年8月より全国各地で、「太陽光発電システム設計・運用セミナー」が開催される。設計ガイドラインおよび構造計算例の解説を中心に、太陽光発電に関する施策の紹介などが行われるとのこと。同年8月8日の東京を皮切りに、2019年2月までの間に全国10カ所(北海道、宮城、東京、愛知、富山、大阪、広島、香川、福岡、沖縄)で実施される。対象者は、太陽光発電のオーナー・事業者、電気主任技術者、関係省庁・自治体担当者など。詳細については、太陽光発電協会のWebサイトで発表される。
太陽光発電システムの構造的欠陥は、発電事業の採算性を損なうだけでなく、設備の倒壊や飛散による二次被害の発生を招くおそれがある。実際、被害事例の多くは不適切な設計による構造耐力の不足が要因となっている。設計ガイドラインの正しい理解と厳正な適用は、太陽光発電をより深く社会に根付かせていくためにも不可欠だといえるだろう。
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