生協が再エネ水素をお届け、宮城県でサプライチェーン実証開始:エネルギー管理
宮城県富谷市で再生可能エネルギーを活用した低炭素水素サプライチェーンの構築実証がスタート。太陽光発電で製造した水素を水素吸蔵合金に貯蔵し、みやぎ生協の配送ネットワークを生かして家庭や小学校に配送する。
日立製作所、丸紅、みやぎ生活協同組合(仙台市)および宮城県富谷市が、環境省の「地域連携・低炭素水素技術実証事業」として、同市内における低炭素水素サプライチェーンの構築に向けて準備を進めてきた実証設備が完成した。
設備の完成を受けて2018年8月3日、みやぎ生協富谷共同購入物流センターで運用開始式が行われ、水素を充填(じゅうてん)した水素吸蔵合金(加圧や温度によって、水素を吸収・放出する合金)カセットを、利用先の一つである富谷市立日吉台小学校児童クラブ棟へ配送し、燃料電池で利用する様子がモニターで生中継された。
今回の実証では、みやぎ生協富谷共同購入物流センターに設置されている太陽光発電システムで発電した電力を用い、水電解装置で水素に変換して水素吸蔵合金カセットに吸収させる。その上で、みやぎ生協の既存物流ネットワークを利用して、富谷市内にあるみやぎ生協組合員の家庭3軒、みやぎ生協店舗および児童クラブ棟に配送する。
配送された水素吸蔵合金カセットを純水素燃料電池に取り付け、水素を取り出して電気や熱に再変換して利用する。実証では1年以上設備を運用し、その成果を2020年3月までにまとめる予定だ。
今回、日立は実証の取りまとめ企業としてシステム全体を設計し、水電解装置や燃料電池などの主要機器を調達・設置するとともに、需給バランスを保ちながら水素貯蔵・配送計画を行う全体運用を管理する。丸紅は、事業化する上での経済性などの課題を抽出し、課題解決に向けた施策を提言。みやぎ生協は、水素サプライチェーンの実証運転を行い、富谷市は、実証場所を提供するとともに、水素サプライチェーンの普及・促進に向けた啓発活動などを担当する。
4者は今回の実証の結果を踏まえて、今後、富谷市で構築したサプライチェーンを宮城県内全域から東北地域や全国に向けて拡大することで、CO2を排出しない都市の実現へ貢献することを目指すとしている。
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