IoTで地熱発電の利用率アップ、東芝が研究プロジェクト:自然エネルギー
東芝は地熱発電の利用率をIoT・AI技術で高める研究開発プロジェクトに着手。発電所のトラブル発生率20%減、発電所の利用率10%向上を目指す。
東芝エネルギーシステムズは、IoT・AI技術を用いた、地熱発電所の利用率向上に向けた研究を開始した。発電所のトラブル発生率20%減、発電所の利用率10%向上を目指す。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として採択されたもので、研究期間は2018年8月〜2020年度までを予定している。
再生可能エネルギーの導入拡大が望まれる中、地熱は安定した出力が得られることから、ベースロード電源として活用可能であり、世界第3位となる地熱資源ポテンシャルを有する日本では、地熱発電の普及促進に大きな期待がかかっている。また、太陽光発電など、他の再生可能エネルギーによる発電コスト低減が進む中、地熱発電についてもより効率的な発電所運営が求められる。
こうした中、今回の研究では、実際の地熱発電所内で「ビッグデータ解析技術を活用した予兆診断」および利用率を下げる原因の1つである「タービンスケールの抑制対策」を行う。
ビッグデータ解析技術を活用した予兆診断では、過去やリアルタイムの運転データを分析・評価することにより、運転停止を招くトラブルを事前に予知できるよう、分析ツールを実装し、研究を実施する。
タービンスケールの抑制対策では、タービンスケールを抑制する薬剤添加を含む効果的なスプレー散布の研究を行う。加えて、薬剤使用量やタイミングをIoT・AI技術を用いて最適化することでスケールの抑制を検証する。地熱蒸気にはシリカなどのスケール(固形成分)や腐食成分を含む不凝縮性ガスが含まれる。スケールはタービンや、熱交換器、配管などに付着して性能を低下させたり管路を閉塞したりするため、定期的な除去や付着防止対策が必要となっている。
東芝エネルギーシステムズは、1966年に地熱蒸気タービン・発電機を納入して以来、3687MW(メガワット)、57台の納入実績がある(2018年8月時点)。Bloomberg New Energy Financeによると、設備容量ベースの市場シェアでは世界トップの23%を誇るという。
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