立入検査でFIT認定取り消しも、低圧太陽光の安全規制を強化:太陽光
経済産業省 資源エネルギー庁は、50kW未満の低圧太陽光発電に対する安全規制を強化する方針を示した。電気事業法に基づく技術基準に適合していないと思われる案件については、立入検査などを実施する方針だ。
経済産業省 資源エネルギー庁は2018年10月15日、「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」を開催した。その中で安全性の確保や長期安定稼働を目指すという観点から、50kW(キロワット)未満の事業用太陽光発電に関する規制を強化する方針を示した。
「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」開始以降、10〜50kW未満の小規模な太陽光発電の導入が急増している。資源エネルギー庁によると、導入件数では全体の約95%(約48万件)、導入容量では全体の約37%(約12GW)を占める。
現状、50kW未満の太陽光発電については、設置する際に、電気事業法における技術基準への適合義務が課されている。しかし、専門家による確認や、使用前自主検査、事故報告などの義務は課されていない。
一方で昨今の豪雨や台風などの災害に伴い、太陽光発電所の損壊や、パネルの飛散などによる二次被害が大きな課題となっている。50kW未満の太陽光発電については事故報告の義務はないが、資源エネルギー庁は今回の委員会で、独自の調査の結果を受け、「一部の50kW未満の太陽光発電所において、安全上必要な性能を満たしていない懸念がある」という見解を示した。
こうした状況を受け、今後は電気事業法に基づく技術基準の適合性に疑義がある
と思われる案件を特定した上で、電気事業法やFIT法に基づく、報告徴収、立ち入り検査を実施。その上で、必要に応じて指導、改善命令、認定取消しなどの対応を行う方針を示した。
設備仕様の原則化も
これらの対策と併せて、50kW未満の小規模太陽光発電については、電気事業法に基づく技術基準が定めた「性能」を満たすために必要な部材・設置方法などの「仕様」を定め、これを原則化するという方針も提示した。
50kW未満の太陽光発電については、その多くがFIT制度の創設以降、発電事業に参入した事業者である。そのため、「一部の事業者においては、電気保安に関する専門性を有していないために、構造強度が不十分な疑いのある設備を設置している可能性がある」(資源エネルギー庁)とし、設備の仕様や設置方法に関するルールの明確化を図る狙い。
さらに、平地と比べてリスクが高い、傾斜地への発電設備の設置についても、技術基準を見直す方針だ。これらの見直しについては、2018年度中に検討を開始する予定。加えて、改正FIT法で義務付けられた標識・柵塀の設置を行っていない事業者に対する取り締まりの強化、各自治体における先進事例を共有する連絡会の設置といった施策を公表している。
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