トヨタが「水素バーナー」を新開発、工場CO2ゼロへ一歩前進:省エネ機器
トヨタが水素を燃料として利用できるバーナーを開発。自動車生産工場に導入し、CO2排出量の削減に活用する。工業利用を目的とした汎用水素バーナーの実用化は、世界初という。
トヨタ自動車(以下、トヨタ)は2018年11月、生産工場で利用する水素を燃料とするバーナーを中外炉工業の協力により新たに開発し、このほど愛知県豊田市の本社工場鍛造ラインに導入したと発表した。同社によると、工業利用を目的とした汎用水素バーナーは世界初という。
従来、水素バーナーは、水素が酸素と急速に反応し、激しく燃焼することで火炎温度が高温になり、環境負荷物質である窒素酸化物(NOx)が多く生成されるために、実用化は困難とされていた。一方、今回開発した水素バーナーは、水素を緩やかに燃焼させる「水素と酸素が混ざらないようにする機構」と「酸素濃度を下げる機構」の2つの新機構を導入し、CO2排出ゼロに加えて、同規模の都市ガスバーナーレベル以下までNOx排出を大幅に低減させるなど、高い環境性能を両立したという。
1つ目の水素と酸素が混ざらないようにする機構は、水素と酸素をバーナー内で並行に流し、完全に混合していない状態で緩慢に燃焼させることで、火炎温度を下げる。
もう1つの酸素濃度を下げる機構は、水素をバーナー内に供給するパイプの中腹に小さな穴を空け、少量の水素と酸素をあらかじめ燃焼させ、酸素濃度を適正値に下げた状態で主燃焼が始まるようにして火炎温度を下げるという仕組みだ。
この技術によって、現在国内工場で1000台以上導入され、工場設備の中でもCO2排出量が多い大型都市ガスバーナーを水素バーナーに置き換えることが可能となる。トヨタでは中長期の環境目標の中で掲げる「工場CO2ゼロチャレンジ」実現に向けて、水素バーナーを他工場へ順次展開していく予定で、同グループ会社内への導入も検討するとしている。
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