「浮体式」洋上風力の導入拡大へ、NEDOが低コスト化技術の実証に着手:自然エネルギー
NEDOが日本周辺の海域に導入しやすい、浮体式洋上風力発電の低コスト化につながる新技術の実証研究に着手。2030年に発電コスト20円/kWhの達成を目指し、先進的な要素技術の実証研究に取り組む。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年12月、2030年に浮体式洋上風力発電の発電コスト20円/kWh(キロワット時)以下という目標に向け、これに寄与する新技術の実証研究に着手すると発表した。
再生可能エネルギーの普及拡大に向けて、洋上風力発電の導入が期待されているが、国内では遠浅な海域が少なく、比較的急峻(きゅうしゅん)な海底地形が多いことから、より深い海域に設置できる浮体式洋上風力発電の実用化が求められている。近年、国内外で浮体式洋上風力発電の実証研究が行われており、技術的な検証が進められているが、今後、実用化と普及を加速するためには、浮体式洋上風力発電の発電コスト低減に直結する先進的な浮体システムが必要となる。
こうした背景から、NEDOでは、2016〜2017年度まで浮体システムの低コスト化に関する要素技術開発を実施した。そこから得られたシステムの安全性や事業性の評価結果を踏まえ、このほど2030年に発電コスト20円/kWh以下の達成を目標とした実証研究を新たに公募し、採択した。
同事業では「ガイワイヤ支持」や「タレットを用いた一点係留」などの先進的な要素技術を導入することにより、発電コスト低減を目指す。「ガイワイヤ支持」は、浮体と風車タワー頂部をワイヤでつなぐことで強度・剛性を確保し、浮体・タワーを軽量化する技術。「タレットを用いた一点係留」は巨大なベアリングで構成される回転機構(タレット)により、係留システムと浮体の間を自在に回転できるよう保持し、浮体・風車を受動的に風向に合わせることで、浮体が波や潮流から受ける荷重を低減する技術だという。
同事業では、まず、実現可能性や事業性を評価するフィージビリティ・スタディ(FS)として、実証海域における基本設計や海域調査、事前協議などを行う。その後、外部専門家による審査で、実現可能性や事業性が認められた場合、実際に浮体式洋上風力発電システムを製作し、実海域での1年以上の運転試験を行い、性能やコストを検証する予定だ。
今回の事業の名称は「風力発電等技術研究開発/洋上風力発電等技術研究開発/次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究(要素技術実証)」で、事業期間は2018〜2022年度。委託予定先は、豊田通商、グローカル、寺岡、九州大学、東京大学、海上・港湾・航空技術研究所となっている。
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