2019年度のFIT価格は4円引き下げ、500kW未満の太陽光発電:太陽光(2/2 ページ)
政府が2019年度における事業用太陽光発電(10〜500kW未満)のFIT価格の方針を固めた。2018年度より4円低い14円/kWhとなる見込みだ。大幅な引き下げの根拠となるコスト分析の結果も公表している。
IRRは4%、設備利用率も向上
2つ目の買い取り価格低減のポイントとなったのが、IRR(利潤)だ。買い取り価格の設定におけるIRRの水準は、FIT制度開始から3年間は「利潤配慮期間」として6%で試算を行っていた。ただ、3年が過ぎた2015年7月1日以降は5%となっている。
今回、2019年度の事業用太陽光発電の買い取り価格を決めるに当たり、IRRをさらに低い4%に設定した。これは、FIT制度開始当初の資金調達コストが4.19%であったのに対し、2018年上半期のコストは太陽光発電の導入拡大により事業リスクが低下しているといった影響で、1.96〜3.11%程度まで下がっていることなどを考慮した。
3つ目は設備利用率の向上だ。事業用太陽光発電の直近11カ月(2017年6月〜2018年4月)の設備利用率は、10kW以上全体では14.4%となり、前年から0.3ポイント向上した。この他、太陽光パネルの過積載が進んでいることやトップランナー分析などの結果から、2019年度の買い取り価格を決める際の設定値を前年度より0.1ポイント高い17.2%とした。なお、トップランナー分析については、システム費用と同様、「50kW以上の上位17.5%」を対象とした。
この他、土地造成費用や接続費、運転維持費などは2018年度の想定値を据え置きとした。なお、2019年度から500kW以上の太陽光発電の買い取り価格については、入札制度に移行する。将来的には250kWまで入札対象を拡大する方針だ。
住宅用の2020年度価格は持ち越し、区分は撤廃
住宅用太陽光発電については複数年単位で買い取り価格を決めてきたため、既に2019年度の価格が決まっている。2019年度は出力制御対応機器の設置義務あり・なしのそれぞれで24円/kWhと26円/kWhだ。ただ2018年度の委員会では、2020年度の価格は決めないこととなった。
これは、住宅用太陽光発電は事業用と比較して、着実にコスト低減が進んでいること、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)などの省エネ政策との協調が必要になることなどを考慮したもの。コストについては、「2019年に売電価格が家庭用電気料金並み」という価格目標に相当する水準(システム費用30万円/kW)が新築案件の上位25%のトップランナーで達成されており、平均値での達成も目前となっている。
ただ、2020年度の価格については、現状の出力制御対応機器の設置義務による2つの区分を撤廃することが決まった。これは既に出力制御非対応のパワコンが市場から消えつつあり、対応型パワコンが主流になっていることを受けたものだ。
今後、住宅用太陽光発電の価格については、次のステップとして「2025年に売電価格が卸電力市場価格並み」という価格目標の達成に向けて買い取り価格が議論されていく。
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