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農業と発電を両立させるために、ソーラーシェアリングのO&Mはどうすべきか?ソーラーシェアリング入門(9)(1/2 ページ)

農業の新しい収益源として注目が集まっている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電事業)」について解説する本連載。今回は農業と発電を両立させるソーラーシェアリングに求められる「運用保守(O&M)」の在り方について解説する。

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 「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」によって事業用太陽光発電が普及してきた中で、新たな課題として浮上してきたのが適切な発電所のメンテナンスの実施です。住宅向け太陽光が普及し始めたころは、「太陽光発電はメンテナンスフリー」とも言われていましたが、実際には定期的なメンテナンスが必要という認識が広まってきています。では、一般にO&M(運用保守)と呼ばれる、太陽光発電設備に必要な日常的・定期的な点検や緊急時の対応について、太陽光発電と営農を両立させる「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電事業)」ではどのように考えれば良いのでしょうか。

 まず、太陽光発電所という観点でソーラーシェアリングと地上設置型(野立て)の設備を比較してみましょう。遮光率に配慮してスリムタイプの太陽光モジュールを採用したり、耐候性のあるPCS(パワーコンディショナー)を採用したり、といった違いはありますが、太陽光モジュール、PCS(パワーコンディショナー)、架台、基礎、キュービクル、監視装置といった個々のパーツについては、ほぼ共通のものが使われます。

 ただ、ソーラーシェアリング特有の違いとして、一般的な地上設置型と大きく異なるポイントに「架台の設計」が挙げられます。

 ソーラーシェアリングでは、農林水産省による一時転用許可基準の中で、「最低地上高2m(メートル)以上の空間確保が必要」とされています。そのため、脚の長い架台を利用し、少なくとも地上から2m以上の高所に太陽光モジュールを設置することになります。2m程度の位置に太陽光モジュールを藤棚式で設置すれば、背面側から目視点検しやすい環境といえます。しかし、実際には営農に必要なトラクタやコンバインなどの利用を考え、設置高さを地上高3〜4mとするケースが多くみられます。そうなると、地上設置型と同じような方法での太陽光モジュールのバックシートやケーブルの状態確認はしにくくなりますし、ましてや表面を目視することはより困難です。


3〜4mの高所にあるモジュールの点検方法は課題

 他にも、営農者の安全確保のためにPCSを架台上部へと設置することもあり、PCSの点検や再起動をするために脚立などが必要になる場合もあります。アレイ全体が人の身長より低いことも珍しくない昨今の地上設置型からすれば、全く異なる環境でのO&M作業が求められます。豪雪地帯における地上高が高く設計されたアレイ式架台のメンテナンスに近い作業環境ともいえるでしょう。

 また、定期点検の実施タイミングも一考が必要です。発電設備の下で農業が行われている時期には、土が耕起されていたり、畝(うね)が立てられていたり、農作物が生育していたりします。このうした時期には、敷地内にただ足を踏み入れるだけでも気をつかう必要があり、高所作業用の脚立・立ち馬を持ち込んだり、ましてや高所作業車を入れたりすることは困難です。農繁期・農閑期といった農業の暦を把握し、実際の作業についても営農者とコミュニケーションを取りながら進めていくことが必要となってきます。

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