家庭に省エネレポートを送付するだけ、世界累計230億kWhの節電量に
日本オラクルはエネルギー使用量などに関するレポートを送付し、家庭の省エネを図るプロジェクトで、全世界で累計節電量約230億kWhを達成したと発表。これは、大阪府の全世帯に必要な1年分の電力に相当するという。
日本オラクルはこのほど、「Oracle Utilities Opower Energy Efficiency」プログラムのサポートを受ける世界各地の一般家庭で、累計節電量約230億kWhを達成したと発表した。これは、大阪府の全世帯に必要な1年分の電力に相当するという。
このプログラムは行動情報に基づき、省エネルギーを促す情報を提供する「省エネレポート(HER)」が含まれている。データ分析と行動科学を組み合わせ、電力消費者がエネルギー消費についてより深く理解できる内容になっている。日本を含む11カ国で最大10年間にわたって行っており、累計節電量約230億kWhを達成した。
日本オラクルは2017年から環境省の委託を受け、日本の大手エネルギー事業者5社と連携し、家庭ごとにパーソナライズした家庭向け省エネレポートを年に4回、1エネルギー事業者当たり6万世帯(合計30万世帯)に送付する実証実験を実施している。
実証の結果、家庭向け省エネレポートを受け取っている家庭とそうでない家庭を比較した結果、電力消費量が平均で2%少なかったことが分かった。環境省の計算では、日本の全家庭が1年間で2%節約することは、古い冷蔵庫2600万台を交換する、または80万世帯に太陽光発電パネルを設置することに匹敵するという。
家庭に送付した省エネレポートの内容は、行動科学等の理論に基づくアプローチ「ナッジ」を活用したもの。ナッジとは英語で「そっと突く(押す)」という意味を持つ。2017年度のノーベル経済学省を受賞したリチャード・セイラー(シカゴ大学教授)氏らが提唱した行動経済学における理論の1つで、規制や大きな経済的インセンティブによる誘導を用いず、科学的なアプローチによって人の行動を良い方向へ変えていくという考え方だ。
このナッジを利用して省エネを促す取り組みは、欧米では費用対効果が高く、対象者にとって自由度のある新たな手法として着目されおり、日本でもCO2排出削減手法の1つとして注目されている。
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