再エネ水素と燃料電池車で発電、電力をビルに最適供給:電気自動車
竹中工務店が水素を充填(じゅうてん)した燃料電池自動車(FCV)から建物に電力を送るV2B実証に成功。再生可能エネルギー由来電力で製造した水素を活用し、複数のFCVからの電力供給を最適化することに成功したという。
竹中工務店は2019年2月、同社東京本店が立地する江東区新砂エリアで、エネルギーマネジメントシステムを活用し、水素を充填(じゅうてん)した燃料電池自動車(FCV)から建物に電力を送るV2B(自動車とビルの間で電力を相互供給する技術・システム)の実証を行い、複数のFCVの電力供給を最適化することに成功したと発表した。
同社は脱炭素社会を目指し、「竹中脱炭素モデルタウン」の実現に向けた取り組みを2016年から開始。技術実証では、新砂エリアの関連建物において、さまざまなエネルギーデバイスを制御し、出力変動の大きい再生可能エネルギーを効率よく活用することを目指している。
これまでの実証では、同社開発のクラウド型エネルギーマネジメントシステム「I.SEM」を活用し、太陽電池(PV)や定置型蓄電池、ガス発電機、電気自動車(EV)、水素製造装置、燃料電池などを目的に合わせ最適に制御してきた I.SEMは建物の電力負荷を予測し、設備機器の最適運転を計画してエネルギーコスト削減への寄与を目指したシステムだ。
今回の実証は、再生可能エネルギーの電力で製造した水素をFCVに充填し、FCVからの電力を建物の電源に活用することを目的に実施。敷地内の水素ステーションで、水素を充填したFCV2台を「MSEG」(発電機、蓄電池、PVなど複数のエネルギーデバイスを直流で統合したパッケージシステム)につなぎ、FCVで発電した電力をI.SEMで任意に指示された建物に供給した。また、停電時を想定し、系統から切り離された避難所想定の建物にMSEG経由でFCV2台とPVだけで電力を送ることに成功した。これにより、PVやガス発電機などと同様にFCVの電力を日常的なデマンド制御に活用すると共に、停電時にBCP拠点となる避難施設などに電力を供給することが可能になる。
今後も、竹中工務店は、脱炭素社会に向けた次世代エネルギーマネジメントのさまざまな実証を継続する計画。なお、新砂の実証施設は見学施設としても活用し、建築主をはじめ、関係の省庁や自治体に幅広く提案し、新たなオープンイノベーションを呼び込む。
具体的なまちづくりプロジェクトに対しては、自治体やデベロッパーに向けて水素ステーションを地域のエネルギーステーションとして活用する全体構想を示し、避難所となる施設にMSEGを活用したV2Bシステムを提案するなど、同社のエネルギーソリューションを幅広く展開する計画だ。
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