村営の小水力発電所をコープグループが改修、売電収益を地域振興につなげる:自然エネルギー
奈良県の下北山村で、地域振興への貢献を目指した小水力発電所の改修プロジェクトが進行中だ。村とコープエナジーならが取り組むプロジェクトで、稼働から20年以上経過した村営発電所を改修して新たに売電事業を行うとともに、その収益の一部を村の振興事業に活用する。事業費の一部をクラウドファンディングで募集中だ。
奈良県の東南端に位置する下北山村で、地域振興への貢献を目指した小水力発電所の改修プロジェクトが進行中だ。下北山村とコープエナジーならが取り組むプロジェクトで、村営の発電所「小又川発電所」を改修して新たに売電事業を行うとともに、その収益の一部を村の振興事業に活用する。更新に必要な事業資金の一部をクラウドファンディングで募集中だ。
小又川発電所は村や奈良県などが中心となって建設を進め、1993年に稼働を開始した。出力は98kW(キロワット)で、発電した電力は近隣の「下北山スポーツ公園」で消費しつつ、余剰電力は関西電力に売電するという事業スキームだった。
しかし発電開始から20年以上が経過した昨今、発電施設の老朽化などにより、このままでは発電所の継続的な運用が難しくなってきた。小又川から得られる本来の水量を控えた規模の発電所として稼働したため、余剰電力の売電による利益も少なく、設備の維持も難しい状況だったという。
そこで2016年に下北山村と協定を結んだ市民生活協同組合ならコープグループの子会社で、再生可能エネルギー事業を手掛けるコープエナジーならが、小又川発電所の設備更新を目的とした実施可能性調査を行った。
その結果、設備更新によって取水量を増やしたり、発電機を更新したりすることで、「再生可能エネルギーの固定買取価格制度」を利用した売電事業として採算が取れることが分かったという。そこで、下北山村が所有する現状の取水設備や発電所建屋などをコープエナジーならが借り受け、設備更新ともに発電事業に取り組むプロジェクトの実施が決まった。
設備更新では、まず取水口の改良に取り組む。小又川から発電に必要な水を引き込む取水口の「スリット(隙間)」を大きくし、取水量を従来の180l/s(リットル毎秒)から280l/sに増加させる。それに伴い、引き込んだ河川水を発電設備まで送る水圧管路も増強する。
さらに取水量の増加に合わせて、従来の約1.8倍となる出力176kWの発電機を新たに導入する計画だ。水車については、水力発電関連機器の製造を手掛ける田中水力(神奈川県厚木市)が製造する「横軸2射ペルトン水車」を導入する。
こうした設備更新によって、新しい小又川水力発電所では1030MWh(メガワット時)を発電する計画だ。一般家庭約290世帯分の年間使用電力量に相当する(一世帯当たり3600キロワット時換算)。発電した電力はFITで売電を行い、その収益の一部を利用してならコープグループは下北山村の地域振興につながる事業に取り組む計画だ。
今回の更新計画の総事業費は税別3億3000万円を見込んでおり、発電開始時期は2020年6月を予定している。更新工事の設計・施工管理はハイドロプランニング(千葉県流山市)、施工は竹田建設(京都市伏見区)が担当する。
なお、今回の更新計画にかかる事業費の一部について、現在クラウドファンディングを利用して出資者を募集している。出資者に対しては返礼品として下北山村の特産品を贈呈する予定だ。
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