離島の再エネ活用を後押しするハイブリッド蓄電池、中国電力が実証運用で成果:エネルギー管理
中国電力が島根県の隠岐諸島で実施してきたハイブリッド蓄電システムの実証を完了。複数種類の蓄電池を組み合わせて運用することで、再エネの出力変動を吸収し、電力系統の安定化に寄与することを検証できたという。
中国電力は、環境省の補助事業採択を受け島根県西ノ島町(隠岐諸島)で実施してきた「ハイブリッド蓄電池システム」の実証事業の事業報告書をまとめ、このほど環境省へ提出した。同事業は「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」で、隠岐諸島での再生可能エネルギーのさらなる導入拡大を図るため、2015年9月〜2019年3月31日まで蓄電池システムの実証を実施したもの。なお、今後も同システムは継続して利用する。中国電力は、再生可能エネルギーの導入が拡大する中で、技術的課題を解決しながら、蓄電池技術に関するさらなる知見の蓄積を図り、離島における電力の安定供給確保に貢献する方針だ。
電気を安定的に供給するためには、電気の「使用量」と「発電量」を常に一致させる必要があるが、再エネは天候などにより発電出力が大きく変動するため、導入の際にはこの出力変動対策が課題となる。特に、送電線が本土と連系していない離島では、電力ネットワークの規模が本土に比べて小さく、発電出力の変動による影響が大きくなることから、再エネの更なる導入拡大のためには、出力変動対策が必要となる。今回の実証では、特性の異なる2種類の蓄電池を組み合わせたハイブリッド蓄電池システムを設置した上で、再エネの導入拡大を図るとともに、蓄電池の効率的な充放電管理・制御手法などに関する技術実証を行った。
同蓄電池システムは西ノ島変電所に設置した。設備はNAS電池(出力4200kW、容量2万5200kWh)リチウムイオン電池(2000kW、700kWh)およびエネルギー・マネジメント・システム(EMS)一式他で、工事費は約25億円。
今回の実証で、隠岐諸島の電力供給安定性の向上蓄電池システムに連系する再エネ発電設備は、2019年3月末時点で約8000kW導入されているが、短周期と長周期のそれぞれの変動に対して、リチウムイオン電池とNAS電池の協調制御は良好であり、系統周波数が管理目標値以内に収まっていること(電力の供給安定性が向上)を成果として確認した。また、地球環境負荷の低減再エネの導入拡大により、内燃力発電機で消費する燃料を低減でき、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出が削減できた。2018年度の二酸化炭素削減量実績は約6100トンとなっている。
さらに、同蓄電池システムは、日本初の先進的な取り組みであり、視察による隠岐諸島への来島者は、システム設置(2015年9月)から2019年3月末までに延べ700人以上となるなど地域の活性化にもつながっている。
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