燃料に不向きな「竹」を使える、国内初のバイオマス熱電供給プラントが実証稼働へ:自然エネルギー
国内に豊富に存在するものの、バイオマス燃料には不向きとされている竹。この竹を燃料として利用できる発電プラントが熊本県南関町に完成した。
国内に豊富に存在する資源であるものの、燃焼時の特性から一般にはバイオマス燃料としては不向きとされている竹。この竹をバイオマス燃料として活用できる実証プラントが熊本県南関町に完成した。NEDOのバイオマスエネルギー導入促進プロジェクトの一環として、バンブーエナジーが同社の敷地内に建設したもので、2019年10月から本格的な実証運転を開始する計画だ。
今回設置したプラントは、ORC(オーガニック・ランキン・サイクル)熱電併給設備とバイオマス燃焼炉を組み合わせている。ORCとは蒸気タービンと同じくランキンサイクルによる発電方式の一種で、蒸気タービンとは異なり熱媒として水ではなく、有機媒体(シリコンオイル)を利用して発電を行う技術のこと。プラント全体の電気出力は995kW(キロワット)、熱出力は6795kWとしている。
竹はカリウムを多量に含んでおり、灰の軟化温度が680〜900度と低く、大型のボイラーで燃焼させると炉内に「クリンカ」という溶岩を生成する特性がある。さらに塩素濃度も高いため耐火物や伝熱管を腐食させやすい。こうした点がバイオマス燃料には不向きとされていた。
このORC熱電併給設備とバイオマス燃焼炉では、未利用材となっている竹を30%、バーク(樹皮)を70%の比率で混焼し、燃焼温度や運転モードを最適化することにより、竹燃焼時の最大の課題であるクリンカ対策を可能にしたという。プラントでは周辺地域で有効利用が課題となっている竹を年間8750t(トン)程度利用する計画で、原料の調達については地元自治体の全面的な協力を得たとしている。
プラントで発電した電力や熱は、隣接する同じ竹材を材料とする製品加工工場で最大限活用する(熱媒油供給2800kW、温水供給3995kW)。ORC熱電併給方式を採用することにより、一般的な蒸気タービンを用いる熱電併給方式を導入する場合より、設備コストを2億円程度低減できる他、電力を小売電気事業者から購入し、熱をA重油ボイラーで供給する場合と比較し、年間で約1万9000tのCO2排出量削減につながるとしている。
バンブーエナジーは今後、2023年頃の事業化を目指して設備の運転・維持管理手法の確立を目指す。同時に、抗菌脱臭効果を持つ燃焼灰も販売を行い、経済性の向上を図るという。実証事業後は、グループ全体で最終的に120名を超える雇用を計画しており、地方の雇用創出と地域竹資源の保全も目指す。中長期的には今回の実証事業をモデルケースとし、全国の他の地域へ展開していきたい考えだ。
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