FITの抜本改革で“低圧太陽光バブル”は終焉へ、入札制度は100kW以上に拡大:太陽光(2/2 ページ)
「FIT制度の抜本的改革」に向けた議論が本格化。FIT開始以降、国内で急速に普及し、安全面での懸念も指摘されている野立て型の低圧太陽光発電は、2020年度からこれまでのような投資目的での新規開発は事実上難しくなりそうだ。
高圧案件の入札対象は「100kW以上」に拡大へ
「競争電源」に分類される高圧以上の太陽光発電については、既に買取価格の決定に入札制度を導入している。2019年11月5日に開かれた調達価格算定委員会では、2020年度の入札条件に関して事務局案が示された。
これまで合計4回の入札が行われているが、現状、入札制度の対象となっているのは連係出力500kW以上の案件だ。ただ、これまでの議論で、入札対象範囲を広げ、より小規模な案件についても入札制度に移行させる方針が示されている。
今回の委員会では昨今の太陽光発電事業に関するコストの低下や、これまでの入札結果などを踏まえ、入札対象範囲を100kW以上とする方針が示され、概ね了承された。ただ、正式な決定は2018年12月17日に予定している、第5回の入札結果の公表を受けてからとする。
現状、入札における買取価格の上限は、非公表で実施することとなっている。第4回の上限価格は14.00円/kWh(キロワット時)で、第3回より1.50円引き下げられた。なお、第4回の最低落札価格は10.50円/kWh、平均落札価格は12.98円/kWhで、入札を重ねるごと買取価格の平均値は下がっており、入札制度の導入によるコスト低減効果が表れている。
こうしたこれまでの流れを踏まえると、2020年度の入札で設定される上限価格は14.00円/kWhより低くなることはほぼ確実だ。上限価格の設定に大きく関係しているのが、kW当たりで見た太陽光発電システムの構築に掛かる費用の想定値。委員会で示されたデータでは、直近の2019年に設置された案件(50kW以上)の上位17.5%水準で見たシステム費用は15.39万円/kW。これは、2019年度の上限価格の根拠となった想定値(=2018年設置の上位17.5%水準)である18.2万円/kWから3万円近く下落している。故に2020年度の上限価格のさらなる引き下げは確実な情勢だ。
なお、仮に入札対象が100kW以上に拡大された場合、50kW以上、100kW未満の、地域活用電源に区分される低圧案件と、入札制度の対象となる案件の間に位置する規模の案件については、これまでと同様に、事前に決められた固定価格での買い取りとなる。
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