洋上風力の施工性と効率を向上、大林組が建設技術を新開発:自然エネルギー
大林組は、着床式・浮体式の2つの形式で洋上風車建設に関わる技術を確立したと発表した。施工の効率化や低コスト化、発電効率の向上などに寄与する技術だ。
大林組は2019年11月13日、着床式および浮体式の洋上風車建設に関わる技術を確立したと発表した。着床式では実大規模の「スカートサクション(※)」の設置および撤去を実証しており、浮体式ではコンクリート製浮体を海底地盤に緊張係留する「テンションレグプラットフォーム型 浮体式洋上風力発電施設」を考案した。
着床式では、全高33m、スカート長さ8m、スカート径12mのスカートサクションを水深13mの海中に設置した。スカートサクションとは、基礎頂版から下方に伸びた円筒形の壁を海底地盤中に貫入して、洋上風車の安定性を確保する構造体。着床式であるモノパイルやジャケットの杭を打設する際に用いる大型の機械が不要となるため、無振動・無騒音で基礎の施工が可能になる。
設置後約2週間にわたって基礎に作用する波力、基礎の応力や変位・傾斜角などを計測し、計測終了後はスカート内に注水を行うことで基礎を完全に撤去した。大林組の発表によると、実大規模で実際の波浪を受ける洋上に基礎を設置し、撤去まで実施したのは国内初だという。
また浮体式では、アンカーにスカートサクションを採用した「テンションレグプラットフォーム型 浮体式洋上風力発電施設」を考案した。テンションレグプラットフォーム型は、浮体と浮体構造物の余剰浮力による緊張力を利用し海底地盤に固定するためのテンションレグと、それを海底地盤へ固定するアンカーで構成する。
浮体に長い鎖を取り付け、鎖の侍従によって浮体を保持するカテナリー形式に比べると、海域での専有面積が小さく、生物への影響を抑えやすいという。係留材が少量で済むことや、発電効率が高まるなどのメリットも見込めるとしている。なお、日本海事協会からAIP(設計基本承認)も取得している。
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