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太陽光で“充電もできる”燃料電池を新開発、仕組みは植物の「光合成」:蓄電・発電機器
名古屋工業大学が太陽光エネルギーで蓄積と放電が行える新しい燃料電池の開発に成功。従来の燃料電池は電気を蓄えられない「発電のみの装置」だったが、特定の有機分子を利用することで、単一装置内での充電も可能にしたという。
名古屋工業大学の研究グループは2020年1月、太陽光エネルギーで蓄積と放電が行える、光充電可能な燃料電池を新たに開発したと発表した。従来の燃料電池は電気を蓄えられない「発電のみの装置」だったが、「AQDS-H2」という有機分子を利用することで、単一装置内での充電も可能にしたという。
今回開発した蓄電池は、負極側の電解液にはAQDSという有機分子が溶け込けこませている。太陽光を照射すると、AQDSは電解液中の水素原子を引き抜いてAQDS-H2という分子に変換され、電池全体として充電状態となる。一方放電の際、負極ではAQDS-H2からAQDSへの変換反応が起こる。それと同時に正極では、空気中の酸素分子(O2)が水(H2O)に還元される。放電で生成したAQDSは、再び光照射によってAQDS-H2に変換することが可能であり、電池として何度も繰り返して使用できる。
植物が生命活動のために行う光合成は、太陽光のエネルギーを用いてCO2Oを糖に変換して貯蔵し、空気中の酸素で分解(呼吸)して化学エネルギーを取り出している。今回開発した蓄電池はこの光合成におけるCO2OをAQDS、糖をAQDS-H2Oに置き換えたシステムとみなすことができ、蓄電池内のAQDS-H2と空気の酸素が反応して生じるエネルギーを電気として外部に出力する。
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