東京五輪の聖火にも活用、世界最大級の再エネ水素製造拠点が福島県に誕生:自然エネルギー
福島県浪江町に世界最大級の再生可能エネルギーを活用した水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」が誕生。太陽光発電の電力で、年間最大900トン規模の水素の製造と貯蔵が可能で、この水素は東京オリンピック・パラリンピックでも活用される予定だ。
福島県浪江町で建設が進んでいた、世界最大級の再生可能エネルギーを活用した水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」が、2020年3月から稼働を開始する。太陽光発電の電力で、年間最大900トン規模の水素の製造と貯蔵が可能で、この水素は東京オリンピック・パラリンピックでも活用される予定だ。
FH2Rは新エネルギー・産業技術総合開発機(NEDO)の技術検証プロジェクトで、東芝エネルギーシステムズ、東北電力および岩谷産業らが協力して開発を進めてきた。再生可能エネルギーの導入拡大に伴って発生する余剰電力で水素を製造し、その貯蔵・利用までも含めたシステム(Power-to-Gas)の検証を目的としたプロジェクトだ。
FH2Rでは拠点内にある太陽光発電と系統からの電力を用い、1万kW(キロワット)級と大型の水素製造装置により年間最大900トン規模の水素を製造できる。1日辺りの水素製造量は最大10Nm3で、これは約150世帯の1日の電力使用量に相当する電力量を発電できる他、燃料電池車(FCV)560台に水素を供給できる能力に相当するという。
製造した水素は燃料電池による発電分野での利用や、工場や燃料電池車などのモビリティ分野に供給していく計画。「福島新エネ社会構想」に基づき、福島県内での再生可能エネルギーと水素を利用したエネルギーの地産地消にも活用する。プロジェクトではこうした市場の水素需要を予測し、最適に水素の製造・貯蔵を行えるシステムの構築も目的としている。水素製造量を調節することにより、電力系統の需給バランス調整にも活用する狙いだ。
なお、FH2Rで製造した水素の一部は、東京オリンピック・パラリンピックの際に、燃料電池車などの燃料として活用。同大会では聖火台と一部の聖火リレートーチの燃料として、大会史上初めて水素が使われる計画だが、FH2Rで製造された水素も利用される予定だ。
FH2Rの建設は2020年2月中に完了し、稼働は2020年3月からを予定している。NEDOは本格稼働に先立ち、2020年3月7日に現地で開所式を行う予定だ。
関連記事
- 世界トップを目指す日本の水素戦略、再エネ水素は2032年に商用化
政府は日本での水素社会の実現に向けた行動目標を示す、「水素基本戦略」を固めた。コストと低減と水素需要の拡大に向け、さまざまな実現目標が盛り込まれた。 - 2050年のエネルギー、水素が世界の2割を締める可能性――水素協議会が報告
世界の自動車、エネルギー関連企業などが参加するHydrogen Councilが報告書を公表。2050年までに世界のエネルギー消費量全体の約2割を水素が担う可能性があるとしており、そのCO2削減効果や経済効果などのメリットについても言及している。 - 2020年東京五輪は「水素社会」の見本市に、政府が技術課題解決に本腰
2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、「水素社会」が実際に体験できるようになる――。政府は東京五輪・パラリンピックにおいて世界に発信すべき9つの科学技術イノベーション領域を定め、その実用化計画を提示した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.