超薄型の有機太陽電池、寿命15倍&変換効率1.2倍の高性能化に成功:太陽光
理化学研究所が従来の15倍の寿命を実現する高効率な超薄型有機太陽電池の開発に成功。ウェアラブル機器やソフトロボット用のセンサー、アクチュエータなどに向けた軽量で柔軟な電源としての応用が期待される。
理化学研究所(理研)は2020年3月10日、高いエネルギー変換効率と長期保管安定性を両立する超薄型の有機太陽電池の開発に成功したと発表した。従来比15倍の寿命を実現し、ウェアラブルエレクトロニクスやソフトロボット用のセンサーやアクチュエーターなどに電力供給が行える、軽量で柔軟な電源への応用が期待できるとしている。
有機太陽電池は、従来のシリコン型太陽電池に比べ極めて薄い有機半導体薄膜で形成し、柔軟性・軽量性に優れる。特に基板を含めた全体の厚さを数マイクロメートル(μm)まで薄型化した超薄型有機太陽電池は、衣服や皮膚に直接貼り付けても違和感がないという。
理研ではこれまで変換効率10.5%の超薄型有機太陽電池を開発しているが、基板や封止膜に薄い高分子フィルムを使用しているため、十分なガスバリア性の確保が難しく、安定的に駆動するための発電層や電荷注入層の界面を制御する手法がなかったため、エネルギー変換効率と長期保管安定性の両立が不十分だった。
今回開発した超薄膜有機太陽電池は、高エネルギー交換効率と熱安定性を両立する新たなドナー・アクセプター材料ブレンド膜の設計による発電層の改良と、ポストアニール処理による発電層と正孔輸送層の界面での電荷輸送の改善を実現した。
これにより、基板から封止膜までの全てを合わせた膜厚が3μmと極薄でありながら、エネルギー変換効率は13%を達成。さらに大気中で3000時間保管した後も、95%以上のエネルギー変換効率を保持することができたという。
なお、以前開発した変換効率10.5%の太陽電池の場合、保持率95%を満たすのは約200時間までだった。これと比較すると、エネルギー変換効率は約1.2倍向上し、長期保管安定性は15倍改善したことになる。
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