日産が「全樹脂電池」技術をAPBに提供、低コストな定置型蓄電池を量産へ:蓄電・発電機器
日産自動車が同社の持つ全樹脂電池技術を電池メーカーのAPB(東京都千代田区)にライセンス供与すると発表。低コストかつ安全性の高い蓄電池を可能にする技術で、APBはこの技術を用いギガワットアワークラスの定置型蓄電池の量産を行う計画だ。
日産自動車(日産)は2020年4月16日、同社の持つリチウムイオンバッテリーの要素技術であるバイポーラ電極構造を有する全樹脂電池の技術を電池メーカーのAPB(東京都千代田区)にライセンス供与すると発表した。APBはこの技術を用い、定置型蓄電池の開発を目指す。
バイポーラ電極構造を有する全樹脂電池は、従来液体状であった電解質と金属製だった電極の両方を樹脂に置き換える点が特徴。バッテリーセルの表・裏面をそれぞれ構造体であると同時に正極・負極の機能を有する樹脂集電体で形成し、複数のセルを重ねることで、バイポーラ構造の組電池の構成を可能とする要素技術だ。構造が単純化しコストが下がり、容積当たりの充電容量が増大することに加え、電解質が樹脂に置き換わることで安全性も向上するという。
APBは2018年創業の電池メーカーで、全樹脂電池の量産を目指している。今回ライセンス契約を結んだ全樹脂電池の要素技術は、APBの現代表取締役で、日産の電気自動車「リーフ」のバッテリー開発に携わっていた堀江英明氏が1990年代より構想し、日産および三洋化成工業が2012年より共同で研究開発を行ってきたもの。堀江氏は、日産の電気自動車「リーフ」のリチウムイオン電池開発に携わっていた。
同社は今回、三洋化成工業ともライセンス契約を締結しており、この契約によって日本国内外における自動車用途を除く全樹脂電池の開発、製造及び販売の権利を取得している。
APBは2020年3月にJFEケミカル、JXTGイノベーションパートナーズ、大林組など7社から約80億円の資金調達を受けており、現在、日本国内に年間ギガワットアワークラスの充電量を持つ電池の生産が可能な工場の建設を計画している。
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