回転で電力を貯める「フライホイール型蓄電システム」、日本工営が量産モデルを開発:蓄電・発電機器
日本工営がドイツ企業と共同でフライホイール蓄電システム「Flystab」を開発。機械式の容量が劣化しない量産型の蓄電システムで、再生可能エネルギーの出力変動対策などむけに展開する。
日本工営は2020年8月3日、ドイツのエネルギー関連機器メーカーであるSTORNETIC社と共同で、フライホイール蓄電システム「Flystab」を開発したと発表した。量産型のシステムで、再生可能エネルギーの出力変動対策用途など向けに、国内やアジア地域を中心に市場開拓を進めるという。
フライホイール蓄電システムとは、円盤(フライホイール)を電力で回転させることで、電力を運動エネルギーとして蓄電し、必要に応じて再び電力に変換する機械式の蓄電システムだ。リチウムイオン電池などの化学反応を利用する蓄電池と比較し、長寿命かつ高速な充放電が可能なのが特徴。こうした特性を生かし、欧州では周波数調整市場やマイクログリッドなどで活用されているという。
日本工営は2018年からフライホイール蓄電システムに注目し、ドイツのSTORNETIC社と共同開発を進めてきた。開発においては「福島再生可能エネルギー関連技術実証研究支援事業補助金」を活用。フライホイール蓄電システムのFlystabだけでなく、これに一般的なリチウムイオン電池などを組み合わせたハイブリッド型の蓄電システムの開発にも成功した。
Flystabの1台当たりの蓄電容量は3.6kWh(キロワット時)、出力は60kW(キロワット)。コンテナに収納する形式の蓄電システムとし、格納するフライホイールの台数を増やすこで蓄電容量を拡張できる仕組みだ。
20フィートコンテナでは蓄電デバイスを最大4台収納でき、出力約240kW、蓄電容量14kWh、40フィートコンテナでは最大16台収納でき、同1000kW、同57kWhが目安になるという。コンテナそのものを増やすことで、さらに出力・蓄電容量を拡大することも可能だ。
日本工営よると、Flystabおよび一般的な蓄電池を組み合わせたハイブリッド型蓄電システムは、既に販売可能だという。価格については用途や規模によって、個別の見積もりとなる。
Flystab価格の目安については、「価格そのものについてはリチウムイオン電池などと比較すると高価になる」(同社)という。ただし、再生可能エネルギーの出力変動対策などとしての利用を考えた場合、高速な充放電への対応、充放電による蓄電容量の劣化がほぼないこと、リサイクル可能な材料で構成していること、火災のリスクが少ないことなどのメリットがある他、これらの特性を生かし、一般的な蓄電池と組み合わせるハイブリッド型として利用することで、リチウムイオン電池や鉛電池の寿命を延ばすことが可能になるとしている。
日本工営では実際に開発したシステムについて産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所(FERA)と共同で、模擬マイクログリッド環境を利用した実証実験を実施。その結果、周波数変動の短周期部分をFlystabが吸収することで、リチウムイオン電池や鉛電池の充放電回数を大幅に低減できることを確認したという
関連記事
- フライホイールと蓄電池、アラスカの街を照らす
大規模風力発電所の電力を利用して孤立した都市の電力を得る。このような事例では、急速な電力変動を蓄電池単体で吸収するよりも、フライホイールを組み合わせた方がよい場合がある。スイスABBがアラスカの電力事業者と共同でハイブリッド蓄電システムを立ち上げた。 - 超電導による“世界初”の物理蓄電システムが山梨県で稼働、電力安定化の切り札へ
山梨県や鉄道総合研究所らは、超電導技術を駆使し、再生可能エネルギーの発電変動を吸収できる「次世代フライホイール蓄電システム」を開発。現在稼働している1MWソーラーと連結し電力系統接続による実証を開始した。超電導を使ったフライホイール蓄電システムを実際に電力系統に接続して実証するのは「世界初」(山梨県)だという。 - リニアモーターカーに続く超電導の活用、鉄道総研の描く夢
鉄道に関連する全ての技術を研究する鉄道総合技術研究所。2027年開業予定のリニアモーターカーも、同研究所から巣立とうとしている技術である。このリニアモーターカーで得た知見により、さらに幅広い領域への貢献が期待されているのがさまざまな「超電導」技術である。鉄道総合技術研究所の超電導技術について、小寺信良がお伝えする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.