水素で動く燃料電池商用船を2024年に実現へ、日本初のプロジェクトが始動:蓄電・発電機器
日本郵船、東芝エネルギーシステムズ、川崎重工業、日本海事協会、ENEOSの5社が、高出力燃料電池搭載船の実用化に向けた実証事業を開始。商業利用可能なサイズの燃料電池搭載船の開発および水素燃料の供給を伴う実証運航を目指すプロジェクトだ。
日本郵船、東芝エネルギーシステムズ、川崎重工業、日本海事協会、ENEOSの5社は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成事業の公募採択を受け、2020年9月から高出力燃料電池(Fuel Cell、以下FC)搭載船の実用化に向けた実証事業を開始すると発表した。商業利用可能なサイズのFC搭載船の開発および水素燃料の供給を伴う実証運航を目指すプロジェクトで、これは日本初の取り組みになるという。
世界的に脱炭素化に向けた取り組みが広がるなか、海運領域においては2018年に国際海事機関(IMO)が、国際海運分野からのGHG排出量を2050年までに半減させ、今世紀中の早期にゼロとする目標を発表している。
今回のプロジェクトではこうした海運領域の脱炭素化に向け、中型観光船の船型にした150トンクラス相当(旅客定員100人程度)の高出力FC搭載船舶を開発し、2024年には、水素燃料の供給を伴うFC搭載船の実証運航を目指す。船舶の開発だけでなく、水素の供給に至るまでのバリューチェーン全体を取り組みの対象としているプロジェクトだ。
具体的には、2020年9月からFC搭載船と水素の燃料供給に関するフィージビリティスタディを開始し、2021年から本船・供給設備の設計に着手。2023年から建造・製作を開始し、2024年に横浜港沿岸にて実証運航を開始する。開発するFC船舶は全長25メートル、幅8メートル、約150トン相当の大きさで、搭載する燃料電池は出力約500kWクラスを搭載する計画だという。
日本では政府が2019年に策定した「水素・燃料電池技術開発戦略」では、水素社会実現に向けた産学官のアクションプランとして乗用車以外のFCシステムの活用が課題として挙げられている。既に20トン未満の小型FC船舶の開発は進んでいるが、今回プロジェクトを通して、さらに高出力のFCを搭載した大型FC船舶の実現を目指す計画だ。
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