激動の年となった2020年、ソーラーシェアリング市場に起こった変化とは:ソーラーシェアリング入門(40)(2/2 ページ)
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回は世界的に激動の年となった2020年に、ソーラーシェアリングを取り巻く状況がどのように変化をしてきたのかを振り返ります。
新しいモデルのソーラーシェアリングも誕生
こうしたソーラーシェアリングの大量導入に向けた制度政策面での動きと並行して、農業・農村でソーラーシェアリングのエネルギーを使っていくための実証実験も進んでいます。農林水産省が今年度から「営農型太陽光発電システムフル活用事業」をスタートさせ、これを千葉エコ・エネルギーとして受託し、2020年は畑と施設栽培における実証を進めています。
この取り組みの背景には、2019年の台風15号による千葉県の大規模停電を通じ、農村部のインフラのぜい弱さを実感したと同時に、FIT制度による発電事業では非常時に地域でエネルギーを活用することが困難だと思い知ったという点があります。そこで、自家消費型の発電設備に定置型蓄電池を入れ、電動農機具やEV・PHVなどで活用し、平常時も非常時もソーラーシェアリングからのエネルギーを農業に生かしていくことを試みています。
また、年末にはNon-FITモデルのソーラーシェアリング設備も完成しようとしており、これでFIT制度による大量導入の促進、農業・農村におけるエネルギーの地域消費・自家消費とモデルが揃い、今後の普及拡大に向けた仕掛けが進んだ1年だったとも言えます。
大きな転換期を迎える2021年へ
こうして振り返ってみると、政策面からのソーラーシェアリングへの期待と後押しが強くなり、普及モデルも事業スキームを含めて多様化が進んだのが2020年という年だったと振り返ることが出来るでしょう。
新型コロナウイルス感染症によって色々と活動の制約が大きい1年ではありましたが、世界的にはグリーンリカバリーという言葉も口にされるようになり、再生可能エネルギーによるエネルギー転換の動きはもはや後戻りすることはないだろうと感じています。そして、人類全体の社会活動に影響する脅威が現れたことで、生活の見直しやエネルギー・食料を国内で確保していくことの重要性も認識されたように思います。
日本のエネルギー政策が本格的に、そして後戻りの出来ない転換期に差し掛かる2021年は、ソーラーシェアリングにとってもさらなる飛躍の1年になることでしょう。
関連記事
- 日本政府もついに「温室効果ガスゼロ」を標榜、ソーラーシェアリングにできることは?
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。菅首相が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という目標を表明し、日本も本格的に脱炭素化に向けた機運が高まる中、ソーラーシェアリングが脱炭素化にどのように貢献できるのかについて考察します。 - 日本の再エネ比率を2050年に「5〜6割」へ、経産省が参考値を提示
経済産業省が2020年12月21日に開催した有識者会議で、2050年のカーボンニュートラル達成に向け、日本の2050年における発電電力量の約5〜6割を再生可能エネルギーとする参考値を提示。原子力発電も一定規模活用する方針で、2050年の脱炭素化の達成に向け、今後複数のシナリオを検討する方針だ。 - 菅首相が所信表明、日本の温暖化ガス排出を「2050年に実質ゼロに」
菅義偉首相が所信表明演説を行い、温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロとする目標を宣言。「エネルギー基本計画」の見直しに大きな影響を与えそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.