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「今後の10年」を決める1年に、2021年のエネルギー市場はどうなるのか?ソーラーシェアリング入門(41)(2/3 ページ)

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回は、これかの日本のエネルギー政策にとって、非常に重要な年といえる2021年のエネルギー市場を展望します。

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再エネ拡大に向けた抜本的な政策の見直しを

 再生可能エネルギー関連の政策に目を向けていくと、既定路線となっていたFIT制度の見直しや、FIP制度の設計は続いています。しかし、これらはいずれもエネルギーミックスなどの面で、“古い政策目標”の達成に向けて積み上げられてきた制度です。先述したように、これから従来の日本におけるエネルギー政策を脱却し、世界に脱炭素社会の実現や再生可能エネルギーの主力電源化の流れに追いつこうとするのであれば、まずこれらの旧目標の中で組み立てられた制度そのものを見直す必要があります。

 現在のFIT制度やFIP制度には、その支援によってどの程度の再生可能エネルギー導入を見込むかという定量目標もなく、どんなプレーヤーの参入を促進したいのか、その先に目指す産業としての再生可能エネルギーの姿も定義されていません。もはや制度の運用そのものが自己目的化してしまっているとも言える状態にあっては、新たな政策目標の達成に貢献する制度とはなり得ないでしょう。

 太陽光発電を例に取っても、劇薬のようなFIT制度によってプレーヤーが増加し発電所も次々と開発されてきましたが、関連する政策分野の対応が追いつかずに不適切発電所の増加や地域との摩擦を生じさせてきました。また、発電事業者に対してFIT制度終了後も発電所を撤去せずに運転を続けさせるインセンティブを持たせる施策こそ重要であるのに、廃棄費用積立金などFIT終了時点の廃棄を前提とするような手段が導入されてしまうのも、もはやFIT制度が政策としての目的を見失っていることの証左だと言えますし、これに続くFIP制度も二の舞になる可能性があります。

 現役世代の負担によって、将来世代が低コストの再生可能エネルギーを活用することが出来るようにしていくという制度の原点に立ち返り、一つでも多くの発電所を長く稼働させることによって長期的な社会の便益を確保していくことにも目を向けた制度を作り直すべきです。

求められる新たな制度設計

 それに加えて、継ぎ接ぎだらけのFIT制度が拡大した太陽光発電の市場を急激に縮小させた中で、調達価格さえ引き下げればコストが下がっていく――という幻想からも脱却する必要があります。

 新型コロナウイルス感染症の影響もあって太陽光パネルの価格は急激な値上がりを見せているほか、メーカーもプレーヤーも日本国内で減少していく中では、資材コストも施工コストも下がるどころか上がることになりかねません。何よりも、産業としての再生可能エネルギー育成に全く手を付けてこなかったこの10年のエネルギー政策を省みても、“まだ見ぬイノベーションの出現”に夢を託すのではなく、今からでも国内産業の育成に注力すべきです。

 そのためには、市場が活性化し拡大していくという期待を抱かせる仕組み作りをしなければならず、既存の制度をこねくり回すのではなく、エネルギー政策の転換期にふさわしいビジョンを持った制度設計をやり直すべきでしょう。

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