「今後の10年」を決める1年に、2021年のエネルギー市場はどうなるのか?:ソーラーシェアリング入門(41)(3/3 ページ)
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回は、これかの日本のエネルギー政策にとって、非常に重要な年といえる2021年のエネルギー市場を展望します。
ソーラーシェアリングはどうあるべきか?
では、こうしたエネルギー政策が激動の変化を迎える中で、ソーラーシェアリングはどのようなポジションを確立していくべきでしょうか。昨今、再生可能エネルギーの迅速な大量導入を目指す議論の中で、太陽光発電や風力発電の大きなポテンシャルを持つ農地の活用に注目が集まっていますが、安易に農地の転用を促進すべきとする議論が目立っています。しかし、農地は本来食料生産の基盤としての活用が大前提であり、農業生産の拡大と安定化はエネルギーと同様に食料の自給確保という国家の存続に関わる重要事項です。
安易な農地活用によって「エネルギーか食料か」という無意味な対立を生じさせるのではなく、国家の存立に必要不可欠な資源をどのように確保していくのかという長期戦略を立案し、その下で農業振興と共に普及させる再生可能エネルギー源の決定や、農地活用といった個別方針を決定していくべきです。農業者が激減し、農地の減少も止まらない中で、戦後日本の農地行政の評価を行うことも必要でしょう。また、農山漁村の脱炭素化も言われる中で、産業としての農業は大きな変革を迫られることになります。これらの視点で考えたとき、農業と共存しあらゆる地域で農村のエネルギー生産拠点化を促進できるソーラーシェアリングの存在が際立ってきます。
求められる「推進すべきソーラーシェアリングのモデル」の確立
農林水産省がソーラーシェアリングの設置を認めるようになってまもなく8年、その積み重ねの中で普及が大きく進まなかった理由も、営農面などでトラブルを抱えてしまう原因も見えてきました。これから広大な農地を活用し、新たな時代の農業を開拓していくためにも、2021年は「推進すべきソーラーシェアリングのモデル」を確立することに注力する必要があります。
ソーラーシェアリングは社会にどのような貢献をする技術・取り組みなのかを改めて定義し、これまで国内で行われてきた事業を検証し、必要な制度の見直しや技術開発を迅速に進めなければなりません。何より真っ先に取り組むべきなのは、少なくとも全都道府県に実証プラントを最低1カ所は設置して、各地で行われている農業に適した設備や生産技術の開発と検証に着手することです。
もはや、日本はソーラーシェアリング分野で世界から後れを取りつつあります。そして、その遅れを挽回し再び世界の先頭を歩めるかどうかが、この1年にかかっています。私たちには無駄に出来る時間は砂粒ほども残されていません。2021年は、将来世代のために現役世代として何を成すべきかを見定め、つかむべき未来に向けた一歩を踏み出す年にしていきましょう。
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