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日本の再エネ目標は現行制度で達成できるのか――FIT/FIP制度の在り方を考えるソーラーシェアリング入門(41)(1/2 ページ)

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回は日本における再生可能エネルギーの導入拡大を進める上で、現在のFIT/FIP制度が抱える課題と、今後のエネルギー政策の在り方について考察します。

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 今年も、調達価格等算定委員会による来年度のFIT制度における調達価格決定のタイミングがやってきました。2021年1月27日に「令和3年度以降の調達価格等に関する意見」が公表され、2021年度以降の調達価格などの情報が明らかになった他、2022年4月から導入が予定されるFIP制度についての情報も盛り込まれています。

 しかしながら、2050年のカーボンニュートラルの達成や、エネルギーミックスを大きく上回る2030年の再生可能エネルギー導入目標見直しが提言される中で、旧来のFIT/FIP制度ではこれらの国家目標を実現することに十分貢献できるのでしょうか。

現行のFIT/FIP制度で2030年の再エネ大量導入は実現できるのか?

 徐々にFIP制度の対象となる電源の条件や、引き続きFIT制度が適用される電源などが整理されてきており、当面はFIT/FIP制度の双方を選べる規模の電源や引き続きFIT制度のみの支援となる領域、それぞれの入札対象範囲などが明らかになってきています。


年度のFIT/FIP制度・入札制の対象に関する整理

 今回の調達価格等算定委員会による意見では、事業用太陽光発電に初めて複数年度の調達価格が設定されると言った変化もあり、やっと「事業の予見可能性」が配慮されるようになったという点は評価できます。しかし、今後は淡々と定額で調達価格を引き下げるだけというのは、どうすれば再生可能エネルギーの導入をさらに促進できるかという視野からは外れてしまい、もはや制度を維持すること・継続することが目的化してきている感も否めません。

 現在、2050年カーボンニュートラルの達成に向けた政策議論や、そこに向けたマイルストーンとなる2030年の再生可能エネルギー導入目標の引き上げ提言が各所から行われており、年始の記事でも再生可能エネルギーの拡大に向けた抜本的な政策見直しの必要性に触れました。

 その後、2030年の再生可能エネルギー導入目標を現行の非化石電源比率44%と仮定した場合に必要となる再生可能エネルギーの設備容量を、試算しています。しかし、陸上/洋上風力発電やバイオマス発電、中小水力発電、地熱発電が、昨今の開発状況や事業化のリードタイムの問題もあって、エネルギーミックスの目標値よりもさらに2倍や3倍に上積みするということは困難であるように思えます。

 44%を達成するための現実的な手段としては、既に大量導入の経験を経ており、系統制約を別にすれば事業化のリードタイムが短い太陽光発電が有力と考えられます。

 仮に2030年時点で求められる国内の発電総量を現行のエネルギーミックス目標と同等とし、洋上風力発電を1000万kW、それ以外の再生可能エネルギー電源種をエネルギーミックスでの最大値まで導入したと仮定します。この条件で非化石電源比率44%を達成するためには、現状の4倍近くに相当する2億kWの太陽光発電を導入する必要があります。

 さらに、EVの普及など電化の促進を考慮すると、電力需要はこれまでの想定以上に増加する可能性もあります。その上振れ分は、やはりリードタイムの短さなどに優れる太陽光発電でなければ、補えないでしょう。

 しかし、既に当初のエネルギーミックスにおける導入目標を達成しつつある太陽光発電を、今後さらに導入していくためにはクリアすべき課題も多く残されています。

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