日本の風力発電に“新たな風”、相次ぐ「洋上市場」への新規参入――各社の狙いとは?:自然エネルギー(3/3 ページ)
洋上風力市場への参入機運が高まっている。大手ゼネコンや海運会社など、これまで脇役だった業種が主役に躍り出た。スマートエネルギーWeek2021「WIND EXPO(風力発電展)」で、はっきり分かったトレンドとは? 日本に吹きはじめた、新しい風を読む。
国際ケーブル・シップ、海底ケーブル敷設に商機
KDDI子会社で海底ケーブルの建設・保守を担う、国際ケーブル・シップ。同社はこれまで通信ケーブルを海底に敷設することをミッションとしてきたが、今後は電力ケーブルについても事業の柱に育てていく考えだ。取締役技術部長の藤井幸弘氏は、次のように話す。
「洋上で発電した電気を陸で使うためには、風車と陸をつなぐ電力海底ケーブルが不可欠です。洋上風力発電の普及が進めば、ケーブル敷設にも大きな需要が生まれます。弊社が通信ケーブルで培ってきた技術は、電力ケーブルにも生かせるものですから、ぜひ多くの方に知っていただきたい」
同社ブースには、通信ケーブルと電力ケーブル、いずれの敷設にも使用できる海底ケーブル敷設船(模型)が展示された。この船を活用すれば施工品質や安定性が向上するだけでなく、耐候性にも優れているので、計画通りの工事ができるようになるという。
中日本航空、ヘリコプターでメンテナンス要員を運ぶ
各種チャーター機やドクターヘリなど、多様な航空機サービスで知られる中日本航空は、洋上風力のメンテナンスにヘリコプターを活用することを提案する。ヘリコプターの釣り下げ装置「ホイスト」を使って、メンテナンス要員を風車に下そうという発想だ。航空営業部主任の田中智央氏によると、「欧州ではメンテナンス要員と物資をホイストで風車のナセルに降下させる手法」が既に確立されているとのこと。
「ヘリコプターを使えば、陸から洋上風車への移動時間が短縮されるので、現場での作業時間にゆとりが生まれ、メンテナンスのクオリティや効率性アップにもつながります。また、船とは違って高波の影響を受けないので、計画通りにメンテナンスを進めることができます。欧州では、船とヘリコプターを用途に応じて使い分けることで、風車のダウンタイムをより短くする運用が行われています。私たちは、その手法を日本にも普及させたいと考えています」(田中氏)
洋上風力市場のすそ野はとても広く、さまざまな業種に参入の可能性がある。洋上風力のポテンシャルをさらに高める、これまでにないビジネスモデルが生まれてくる可能性もありそうだ。
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