家電の遠隔制御で確実な「節電」、エネチェンジらがデマンドレスポンス実証:エネルギー管理
エネチェンジとサミットエナジーが家庭向けのデマンドレスポンス実証を発表。節電要請時に家庭に設置したスマートデバイスを活用して家電を制御し、電力系統の安定化に必要な「調整力」を生み出す。
エネチェンジは2021年6月16日、住友商事グループの小売電気事業者であるサミットエナジーと協業し、スマートデバイスを活用して家庭の電力需要を調整するデマンドレスポンスの実証実験を同年秋から開始すると発表した。子会社で英国に本拠を置くSMAP ENERGYの家庭向けデマンドレスポンスサービスを活用するもので、サミットエナジーの顧客向けに提供する。
実証ではSMAP ENERGYのデマンドレスポンス用プラットフォーム「SMAP DR」と、リンクジャパン社製のスマートデバイスを活用。実証に参加する家庭にスマートデバイスを設置し、遠隔からエアコンや冷蔵庫などの家電を制御できる仕組みを構築する。
具体的には、参加者に対しデマンドレスポンスを行う前日に、メールで翌日の節電に協力してほしい時間帯を通知。当日は、あらかじめスマートデバイスとひもづけられた冷蔵庫などの対象家電に対し、一定時間制御を行うことで節電量を創出する。この節電量に応じてポイントが付与され、獲得ポイント数に応じたメリットが参加者に還元される仕組みだ。
今回の実証は、国内で再生可能エネルギーなどの出力変動型電源の導入拡大に伴い、電力系統の安定化に必要な調整力のニーズが高まっていることを受けたもの。調整力とは発電機、蓄電池、デマンドレスポンスなど、電力需給を制御するシステムや仕組みの能力のこと。現在、需要家側が自らの持つ調整力を市場を通じて取引できる仕組みも整備されはじめており、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、こうした調整力市場は今後拡大すると見られている。
エネチェンジによると、消費電力100Wの冷蔵庫300万台の一斉制御に加え、行動変容による節電協力が合わされば、約110万kWの調整力確保が可能になるという。また、この原子力発電所1基分に値する調整力は、市場高騰時の調達量削減による価格高騰リスク削減への活用が期待できるだけでなく、スマートデバイス型DRによる遠隔制御により、DR指令に対して確実に対応できる調整力として活用することも可能としている。
今回の実証ではまず300世帯程度からスタートし、参加希望数に応じて規模を拡大する方針。エネチェンジでは今後、スマートデバイス型DRサービスを活用し、家庭向けに調整力提供型の専用料金メニュー開発の開発を進める。実証実験後は、サミットエナジーの関連電力小売事業者にも提供先を拡大する方針だ。
関連記事
- 電力需要家の「VPP構築」と「市場取引」を支援、エネチェンジが英企業と提携
ENECHANGE(エネチェンジ)は2021年5月10日、100%子会社であるSMAP ENERG通じ、英国でVPP(バーチャルパワープラント、仮想発電所)サービスを手掛けるKiwi Powerと業務提携契約を締結したと発表した。エネチェンジが一定期間の独占販売権を持つかたちで、日本国内の自家用発電機や蓄電池など、電力の需給調整が可能な分散型エネルギーリソースを持つ需要家に対し、Kiwi PowerのVPPサービスを提供する。 - ブロックチェーンで“節電量を融通”、デマンドレスポンス成功率を高める
富士通がブロックチェーン技術を活用して、電力需要家の間で不足・余剰電力を取引できるシステムを開発。電力会社と需要家が協力して電力使用量を調整するデマンドレスポンスの成功率向上に活用できるという。 - テスラ製の蓄電池をドコモショップに導入、太陽光を活用したCO2削減実証
太陽光発電システムによるPPA(第三者所有モデル)事業を展開するTGパワーが、親会社のティーガイアが運営するドコモショップ4店舗で、太陽光発電と蓄電池の活用によるCO2排出量削減実証を開始すると発表した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.