常圧のCO2でプラスチックを直接合成、世界初の触媒プロセスを開発:蓄電・発電機器
大阪市立大学、東北大学、日本製鉄らの研究グループが、常圧の二酸化炭素(CO2)を活用してプラスチック材料を直接合成することに成功。世界初の成果だという。
大阪市立大学、東北大学、日本製鉄らの研究グループは2021年7月、常圧の二酸化炭素(CO2)とジオールを利用し、プラスチックを直接合成する触媒プロセスの開発に成功したと発表した。世界初の成果としており、学会誌「Green Chemistry」で2021年7月26日にオンライン掲載された。
今回合成に成功したのは、脂肪族ポリカーボネートジオールとよばれる、プラスチックに代表されるポリウレタン合成の重要中間体。現在、一酸化炭素や有毒性の材料を用いて合成されているため、代替する技術の開発が求められている。
その一つとして代替原料に二酸化炭素を用い、ジオールと反応させてポリカーボネートジオールを合成する手法は、水のみを副生するグリーンな反応系として注目されている。しかし、効率を高めるためには高圧の二酸化炭素の他、副生物である水を除去するために脱水剤を用いる必要がある。さらに、脱水剤の投入により、不要な副生成物が混入してしまうという課題もあり、脱水剤を用いない触媒プロセスが望まれているという。
研究グループでは今回、脱水剤を用いない水除去手法として、生成物やジオールと水の沸点差に着目。常圧の二酸化炭素を吹き込み、水を蒸発除去することで目的のカーボネート合成が進行すると予想した。実証の結果、さまざまな金属酸化物触媒の中で、酸化セリウム触媒のみで高い活性を示すことが明らかとなり、目的のポリカーボネートジオールを高選択率かつ高収率で得ることに成功。脱水剤を用いることなく、また、高圧二酸化炭素を必要としない、非常にシンプルな触媒反応系の開発に成功した。
今回の成果について研究グループは、添加剤を用いず、常圧の二酸化炭素を化学変換できる新しい触媒プロセスであり、他の水よりも高い沸点を持つ基質への適用も可能であると考えられ、リチウムイオンバッテリーの添加剤やポリマー合成用原料として有用な有機カーボネート、カーバメート、尿素などの合成にも展開可能としている。
今後、実用化に向けた固体触媒の改良、スケールアップを含めたプロセス検討を行いながら、さらに研究開発を進める方針だ。
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