脱炭素の「企業トップリーグ」と新クレジット市場創設へ、経産省が2022年度に実証:法制度・規制(2/2 ページ)
日本でも炭素に価格付けをする「カーボンプライシング」の導入に向けた議論が本格化。その具体策として経済産業省は気候変動対策を先駆的に行う企業群で構成する「カーボンニュートラル・トップリーグ」と、企業が排出量を売買できる新市場を創設する方針だ。
どうなる日本の「炭素税」導入、一部企業からは早期導入の要望も
さまざまな手法があるカーボンプライシングだが、世界で主流なのは炭素税と排出量取引の2つだ。炭素税は化石燃料の利用などに課税する手法で、排出量取引は企業ごとに排出量の上限を定め削減を強制する制度である。どちらも政府が主導し、強制力を持ったカーボンプライシングの手法といえる。
一方、今回、経済産業省が提示したカーボンニュートラル・トップリーグや、加盟企業による新市場のでのクレジットの取引は、企業の自主的な取り組みを基本としたものだ。あくまでも企業の自主性を尊重した制度設計から開始し、進捗がかんばしくない場合には政府によるプライシングも視野に入れる――というのが経済産業省の姿勢であり、炭素税や排出量取引など、強制力を持った手法についての導入は、今回の中間整理案では見送りとなった。
カーボンプライシングについては、経済産業省と同時に環境省でも検討を進めてきた。環境省側の中間整理案は7月29日に公表されたが、こちらでも炭素税や排出量取引の導入については、結論は年内とし、先送りとなっている。これらの背景にあるのが、企業負担が増える施策を導入することへの懸念だ。
一方、導入に前向きな企業も増えてきている。気候変動対策に積極的な企業約190社で構成する日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は、2021年7月にカーボンプライシングの議論を加速させるよう求めた意見書を公表。炭素税については年内に制度の骨格を明らかにするように求めた他、中小企業や低所得者層の負担を防ぐ制度設計を要望している。
「2030年度に2013年度比で46%削減」という国の目標達成には、産業界の脱炭素化が大きな鍵をにぎる。一方、カーボンプライシングは企業の競争力や経済成長にも影響するテーマであるだけに、詳細な制度設計が必要だ。今後、経済産業省と環境省による、両省の立場を越えた円滑かつ迅速な議論が進むことを期待したい。
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