「50年に1度」の高波も大丈夫、大林組が洋上風車基礎の実証結果を公表:自然エネルギー
大林組が洋上風車基礎「スカートサクション」の導入試験結果を公表。実海域で1年にわたる検証を行った結果、十分な支持性能と環境への好影響を確認できたという。
大林組は2021年8月、開発した洋上風車基礎「スカートサクション」の導入試験結果を公表した。実海域で1年にわたる検証を行った結果、十分な支持性能と環境への好影響を確認できたという。
スカートサクションとは、洋上風車の基礎を、水圧を利用して海底地盤に貫入する技術。杭を打ち込む方式のモノパイル構造などでは施工が困難な、岩盤が浅部に出現する海域でも強固に固定できるメリットがある。
また、利用終了後にはスカート内に水を注入することで、水中に基礎を残すことなく半日で完全撤去できるという特長がある。さらに水深が40〜50mと大水深化し、風車が14MW以上と大型化した場合でも、その基礎部に採用することで、工期・コストを削減できるという。
大林組は今回、このスカートサクションを1年間(2020年5月〜2021年5月)にわたって実海域に設置し、その季節ごとの波浪条件下での挙動計測や海洋環境への影響を検証。その後完全に撤去するまでのフローを実施した。
今回設置したスカートサクションは、過去に実施した港湾内での載荷試験、実海域での夏季2週間の波浪下での実証試験を経て、高さを約3m延長させた高さ35.7m、スカート径12mの試験体。実海域波浪条件下で設置し、1年間にわたり挙動計測を続けた。その結果、2021年2月には50年に一度という厳しい海象条件に見舞われまたものの、大きな変状をきたすことなく支持性能を維持できたという。
また、海洋環境への影響調査を実施した結果、基礎が漁礁のような役割を果たし、イシダイをはじめとする沿岸域の海洋生物が集まってきていることが確認できたとしている。
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