「ギ酸」で発電できる新型燃料電池、ジェイテクトが50W級の開発に成功:蓄電・発電機器
ジェイテクトは酢酸製造や樹脂製造の副産物であるギ酸を利用して発電できる新しい燃料電池を開発。手に入りやすく安全なギ酸で発電できる、環境性能の高い燃料電池として実用化を目指すという。
ジェイテクトは2021年11月9日、酢酸製造や樹脂製造の副産物であるギ酸を利用して発電できる新しい燃料電池を開発したと発表した。金沢大学の辻口准教授との共同開発によるもので、今回50W級の実証機の開発に成功。今後、高出力化とともに実用化を目指すという。
ギ酸は樹脂や酢酸製造時の副産物として生産・流通しており、主に畜産・農業分野で家畜飼料の防腐剤などとして使用されているが、エネルギー資源としての利用例は少ない。しかし、ギ酸の水溶液は燃焼・爆発の可能性がなく安全性に優れ、環境循環性が高いことから、他の発電用燃料と比べ、入手性、環境性の点でも優位だという。
ジェイテクトではこのギ酸を燃料として活用できるシステムとして、直接ギ酸形燃料電池(J-DFAFC)の開発を推進してきた。これは固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell、PEFC)の一種で、ギ酸水溶液と空気中の酸素のみで発電できるのが特徴だ。
今回開発した出力50Wの機能実証機では、金沢大学の独自パラジウム触媒技術、ジェイテクトの既存事業で長年培ってきた材料・表面処理技術などを活用し、発電効率を高めたという。具体的には電池サイズを9cm角、セルを複数枚積層した構造で、メタノールを利用した燃料電池よりも高い、最大出力密度290mW/cm2を達成した低騒音・低振動で稼働させることが可能で、液体型燃料電池の特長を生かした長時間の発電が可能だという。
ジェイテクトでは現在、数百W級の燃料電池の開発を進めており、社内での利用を計画している。さらには1kW級の開発を進め商品化を目指す。用途としては照明、通信用電子機器などの電源をはじめ、非常用電源、遠隔地電源、さらには住宅や施設向けの小型分散電源としての用途を見込むとしている。
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