蓄電池内の「再エネ価値」を担保する手法の確立へ、日本ガイシとリコーがトラッキング実証へ:自然エネルギー
日本ガイシとリコーが、再生可能エネルギーの環境価値をトラッキング(追跡)する実証実験を2022年度から始めると発表。再生可能エネルギーの発電から消費、さらには余剰電力の蓄電から放電にいたるまで、全てのプロセスをトラッキングすることで、環境価値をより簡易かつ確実に融通・取引できる仕組みの構築を目指すという。
日本ガイシとリコーは2021年11月15日、再生可能エネルギーの環境価値をトラッキング(追跡)する実証実験を2022年度から始めると発表した。再生可能エネルギーの発電から消費、さらには余剰電力の蓄電から放電にいたるまで、全てのプロセスをトラッキングすることで、環境価値をより簡易かつ確実に融通・取引できる仕組みの構築を目指すという。
天候によって出力が変動する再生可能エネルギー電源の導入拡大に向けて、蓄電池の活用に注目が集まっている。しかし、再生可能エネルギー由来電力を蓄電池に充電、放電した場合の環境価値の取り扱いや、リアルタイムな充放電量の調節など、トラッキングに関する仕組みや制度の整備は今後の課題となっている。
今回の実証は、こうした再生可能エネルギーおよび環境価値のトラッキングの制度化や標準化を目的としたもの。日本ガイシ、恵那市、中部電力ミライズが2021年4月に設立した地域新電力の恵那電力(岐阜県恵那市)が実証フィールドを整備する。具体的には、恵那市公共施設の屋根や遊休地に太陽光発電設備やNAS電池の設置を行う。
これらの設備を活用し、実証では主に2つのケースを想定した取り組みを実施する。1つが、基幹系統への逆潮流を抑制し、配電網内の再エネ利用率を高めるための実証だ。変電所以下の配電網内の再生可能エネルギー由来電力と、需要家の消費をリアルタイムにトラッキングし、余剰分の電力に環境価値を付与したかたちで確実にNAS電池に充電する。
これにより、再生可能エネルギーの余剰電力が基幹系統に流れ込む逆潮流を抑制し、環境価値の担保された電力をNAS電池にためておくことができ、上位系統の送電容量に制約がある場合でも、基幹系統の安定を乱すことなく配電網内への再エネの追加導入が可能となり、地域の再エネ比率と地産地消率を最大化できるメリットがある。
2つ目は、変電所以下の配電網で発生した再生可能エネルギーの余剰電力を、再エネ由来であることを証明し、環境価値を担保したまま他の配電網へ融通する実証だ。上位の基幹系統の送電容量に制約があるために、再生可能エネルギー由来の余剰電力を異なる配電網間でリアルタイムに融通・利用することが困難な場合に、トラッキングにより再エネの環境価値を担保したままNAS電池に充電する。その後、系統制約のない時間帯に異なる配電網のNAS電池間で再エネを融通することで、再エネの環境価値を失わず、地産地消の比率を高められるという仕組みだ。
なおこれらの実証のトラッキングにおいては、リコーが開発するブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用した再エネ流通記録プラットフォームを活用する。
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