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ついに公開!「営農型太陽光発電の設計・施工ガイドライン」 そのポイントを解説ソーラーシェアリング入門(51)(2/2 ページ)

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回はNEDOが公開した「営農型太陽光発電システムの設計・施工ガイドライン2021年版」について、その策定にも携わった筆者が内容のポイントを解説します。

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営農型であることによる設計や施工の配慮ポイント

 太陽光発電設備としての構造や電気的に考慮すべき基本的な事項はここでは割愛し、特に営農型であることで考慮すべきとしたポイントを紹介します。

 まずは地上設置型の太陽光発電設備との大きな違いとして、営農型は設備下で農業従事者が作業を行うということがあり、その際の電気的な保安をどのように図るかは、最も重要なポイントです。これについては、「1.6電気的設計方針」で言及しており、農業従事者は設計者、施工者、保守点検事業者から感電リスクについて説明・教育・講習を受けているものとして取り扱うこととしています。

 従って、ソーラーシェアリング事業を行う際は農業従事者に対して十分な電気保安教育を実施することが求められます。設備的な観点では、農作業による電気配線の損傷事故を防ぐため、金属配管などによる保護や警戒表示、埋設管は場所の周知と共に十分な深さを取ることなどを求めています。

 次に、事業計画の際の留意点がいくつか挙げられますが、計画地が水田の場合は地盤調査の際に湛水状態での調査を行うこと、対象農地における農作物の生産計画や作付け期間を確認すること、農業機械の寸法や旋回半径などを確認することなどを事前調査の際に行うこととしています。

 発電設備の配置計画を立てる際にも、農業機械の進入路や走行ルートの考慮、農作業に支障がない空間の確保、隣接農地や用水路・道路の利用に支障がないこと、アレイによる雨だれの考慮などを求めています。また、架台に対して農業機械の衝突が起き得ることを想定し、衝突の際に損傷範囲を限定し連鎖的な架台の倒壊を防止するため、構造上の冗長性を持たせることも求めています。基礎については杭基礎を基本として、直接基礎とする場合には独立基礎として専有面積を最小化すること、作土層の保護のため原則として地盤改良工法は行わないこととしています。

 施工管理の際のポイントとしては、重機などを用いる場合の作土層や畦畔・水口の保護、農閑期を考慮した作業スケジュールの計画の他、比較的軟弱な地盤上における高所作業を行うことへの注意を求めています。メンテナンスについても、同様に農閑期の考慮や高所作業であることへの注意のほか、保守点検計画に際して農業従事者との事前協議の実施を求めています。

完成は2022年度末の予定、今後も情報のアップデートを

 ここまで、大まかに営農型のガイドラインであることによるポイントを簡単に紹介してきましたが、私がこれまで培ってきた知見の中で重要と考えている事項も最大限反映していただきました。とはいえ、ソーラーシェアリングはさまざまな農地・営農環境で実施される事業になるため、今回の内容で十分であるとは言えない部分もあります。

 例えば、追尾型システムや園芸施設などへの設置も取り込めておらず、これらは今後の課題であると個人的にも認識しています。FIT制度における特定営農型太陽光発電の事業計画認定件数も積み上がっているなど、これからソーラーシェアリングが本格的な普及段階に入っていくことが見込まれる中で、こうしたガイドラインを先んじて整備することで、後々のトラブルの増加を避けることが出来ればと考えています。

 このガイドライン策定事業は2020年度〜2022年度末となっており、NEDOによる文書にも各種実証実験結果などを反映して、さらに改定が進んでいくことが明記されています。まだその事業期間を1年以上残していますので、引き続き情報が公表できる段階になりましたら、アップデートされた内容を取り上げていきたいと思います。

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