太陽光で走る“無充電EV”への期待も、東芝が透過型太陽電池で世界最高効率:太陽光
東芝が透過型亜酸化銅(Cu▽▽2▽▽O)太陽電池において、世界最高効率を達成。2つの太陽電池セルを重ね合わせ、既存の太陽電池より高い効率を得られる低コストなタンデム型太陽電池の実用化を後押しする成果だという。
東芝は2021年12月22日、透過型亜酸化銅(Cu2O)太陽電池において、発電層の不純物を抑制することで、「世界最高」(同社)の発電効率8.4%を達成したと発表した。2つの太陽電池セルを重ね合わせ、既存の太陽電池より高い効率を得られる低コストなタンデム型太陽電池の実用化を後押しする成果だという。
タンデム型太陽電池とは、2つの太陽電池セルをボトムセルとトップセルとして重ね合わせ、両方のセルで発電することにより、全体としての発電効率を高める太陽電池。狭い面積で高効率な発電が期待できるため、電気自動車(EV)などにも適用可能な、次世代の太陽電池として期待されている。しかし、高効率太陽電池であるガリウムヒ素半導体(GaAs)など、III-V族太陽電池を積層したタンデム型太陽電池は、30%台の高い発電効率が報告されているものの、製造コストが既存のシリコン(Si)単体の太陽電池と比べて数百倍〜数千倍と高く、幅広い製品に適用するには大幅な低コスト化が必要だった。
これまで東芝では既に広く普及しているSi太陽電池セルをボトムセルとし、その上にトップセルとして透過型Cu2O太陽電池に注目。資源的に豊富な銅と酸素の化合物であるCu2Oを主な材料とし、III-V族半導体と比べて、基板(ガラス)、原材料(主に銅と酸素)、製造装置(半導体や液晶で用いられるスパッタ装置)も安価で、低コスト化が期待できるという。既に2019年にCu2O/Siタンデム型太陽電池として、Si太陽電池単体での効率(当時22%)を上回る23.8%の発電効率を達成していた。
今回東芝は、Cu2Oを用いたトップセルの発電効率の低下原因となるCu2O発電層中の不純物の量を制御する独自技術を開発し、発電効率8.4%という世界最高効率の透過型Cu2O太陽電池の開発に成功した。
この発電効率8.4%の透過型Cu2Oをトップセルに、25%の高効率Si太陽電池をボトムセルに適用したCu2O/Siタンデム型太陽電池の発電効率を見積もったところ、発電効率27.4%と試算された。この予測値は、Si太陽電池の世界最高効率26.7%を上回る効率だ。また、この太陽電池をEVに搭載した場合、充電なしで1日に約35kmの航続距離を実現できるとしている(試算条件はNEDOが「太陽光発電システム搭載自動車検討委員会」の中間報告書に記載した、高効率太陽電池を搭載した自動車の充電回数の試算に基づく)。
東芝では、実用化に向けて目標とするCu2Oを使用したタンデム型太陽電池の発電効率は30%以上であり、それに必要な透過型Cu2Oトップセルの発電効率は10%としている。今後はNEDOの委託事業として、目標値の達成に向けた研究開発を実施する方針。さらに、NEDOの委託事業とは独立して、東芝エネルギーシステムズと共同で、量産タイプのSi太陽電池と同じサイズの、大型Cu2O太陽電池の開発にも着手した。今後、2023年度を目標に、外部評価用サンプルの供給を開始し、2025年度を目標に実用サイズのCu2OSiタンデム型太陽電池の製造技術の完成を目指す方針だ。
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