日米初の実配電網でのマイクログリッド構築に成功、レドックスフロー電池の活用で:エネルギー管理
NEDOと住友電工が米国カリフォルニア州で取り組んでいたマイクログリッドの構築実証が成功。。66軒の需要家を含む実配電網でのマイクログリッド構築と、大型の定置用レドックスフロー電池の運用、さらに平常時・非常時の併用運転に成功したという。
NEDOと住友電気工業はは2022年1月27日、米国カリフォルニア州で取り組んできた実配電網でのマイクログリッド構築・運用の実証に成功したと発表した。66軒の需要家を含む実配電網でのマイクログリッド構築と、大型の定置用レドックスフロー電池(RF電池)の運用、さらに平常時・非常時の併用運転(マルチユース)に成功したという。
米国カリフォルニア州は、2045年までに電力の100%を温室効果ガスの排出がないエネルギーで賄うとする州法「SB100」を成立させており、再生可能エネルギーの大量導入に伴う電力品質低下の解決策として蓄電設備の導入を促進している。
また、同州では近年、森林火災や猛暑下に空調負荷が急増することへの対策として、緊急で計画・輪番停電が行われることが社会問題になりつつある。そこでデータセンターなどの需要家側では、特定の分電盤(重要負荷分電盤)に接続された回路にのみ蓄電池の電気を流すなどの停電対策を行っているが、さらに広域での停電対策と電力システムのレジリエンス(回復力)強化が求められているという。
こうした背景から、NEDOは2015年9月から住友電気工業株式会社を委託先とし、同州サンディエゴにて長寿命で大型化に適した定置用のレドックスフロー電池を利用した実証に取り組んできた。
今回の実証では、レドックスフロー電池を活用することで実配電網の一部にマイクログリッドを構築し、同州で問題となりつつある自然災害や計画・輪番停電への対策とする実証を2021年10月から開始した。
具体的には、災害時などの停電地区への電力供給を想定し、容量8MWhのレドックスフロー電池を接続した配電網の一部を商用系統から切り離した上で、電池を自立電源としたマイクログリッドを形成。66軒の需要家に電力を供給した。マイクログリッド内の電力需要や太陽光の発電出力は常に変動するが、電池が需給バランスの維持に必要な電力を充放電することで、配電線の電圧や周波数を安定させることができたという。
また、系統連系状態からマイクログリッドへ移行する際は、停電状態で蓄電池を起動するブラックスタート移行と、需要家が停電を感じない無瞬断でのシームレス移行のいずれでも安定していることを確認できたという。なお、停電時を想定し、実配電網で蓄電池を電源として構築・運用されたマイクログリッドは日米において初の事例としている。
さらに、今回の実証を含む一連の取り組みにより、レドックスフロー電池の性能も検証した。これまでの約4年間の実証運転において、RF電池はSOC(State of Charge:充電状態)が0%から100%のフルレンジで運用を継続しても、顕著な容量低下が認められず、設計寿命である20年後においても定格容量を確保できる見通しだという。加えて、約4年間の実証期間においてシステムとしての大きな故障もなく、高い稼働率(99%)で運用を継続できる信頼性の高さを検証できたとしている。
NEDOと住友電気工業は今回の実証の成果について、無電化地域における太陽光や風力発電施設を併設したマイクログリッドの構築や、発電機燃料の輸送コストが高い島しょ地域での再生可能エネルギーによる100%電力供給などに適用できると見込む。今後こうしたさまざまな用途に向けて、成果の普及展開を目指す方針だ。
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