国内初の商用スケールの「大型潮流発電」を実証、九電みらいが長崎県五島沖で:蓄電・発電機器
九電みらいエナジーが国内初となる商用スケールでの大型潮流発電システムの実証実験に取り組むと発表。環境省の実証事業の一環として実施するもので、発電開始は2024年度を予定している。
九電みらいエナジーは2022年3月14日、国内初となる商用スケールでの大型潮流発電システムの実証実験に取り組むと発表した。環境省「令和4年度潮流発電による地域の脱炭素化モデル構築事業」の一環として長崎海洋産業クラスター形成推進協議会(長崎県長崎市)と共同で実施するもので、発電開始は2024年度を予定している。
同社では2019〜2021年度に環境省の実証事業として、長崎県五島市沖において500kW級の潮流発電機の実証実験に取り組んできた。今回はさらにスケールアップし、1000kW級の潮流発電システムを同じ五島市沖に設置。電力系統に連系させ、より商用ベースに近い形式で実証を行う。
設置する潮流発電機は、英国の潮流発電事業者であるSIMEC Atlantis Energy(SAE)社の発電機を利用する。SAE社の子会社であるATLANTIS OPERATIONS(AOUK)社が500kWのモデルを1000kWに改造し、設置や撤去などの施工についても指導・監督を行う。実際の設置および撤去については、AOUK社の子会社であり日本法人のAtlantis Operations Japanが実施する。
1000kW級の潮流発電機は、定格流速2.5m/s、ロータ直径18〜20m、全高25〜26m、重量約1500t。1基を水深約40mの海底に設置し、ケーブルを通じて陸上の変電システムに送電し、系統と連係を行う。実証を通じて、国内の環境や技術基準などに適合した技術の確立を図り、日本における潮流発電の早期実用化を目指す方針だ。
スケジュールは以下の通り。2022年度に機器設計、発電機の部材、部品製造・調達を開始し、2023年度に500kW発電機を改造後、設置する。2024年度に発電を開始し、2025年度に実証運転終了後、機器を回収する予定。初年度の予算規模は6.5億円を予定している。
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