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電力需給は夏と冬も“綱渡り”の見通し、「ブラックアウト」を防ぐ政府の対策は?エネルギー管理(1/3 ページ)

2022年3月下旬に経産省が初の「需給逼迫警報」を発令するなど、大変厳しい状況に追い込まれた国内の電力需給。2022年度の夏と冬も、非常に厳しい需給状況となる見通しだ。政府の委員会で電力需給の最新の見通しと、追加的な供給力確保策等の対策が議論された。

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 2022年度の夏季及び冬季のいずれも電力需給の逼迫(ひっぱく)が懸念されている。

 特に東京エリアでは2023年1月と2月に、厳気象H1需要(10年に1度の厳気象を想定した最大需要)に対する予備率(需要に対する供給力の余力を表す割合)がマイナス値となるなど、抜本的な対策が必要とされている。

 電力広域的運営推進機関(広域機関)の第72回「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」や、経済産業省 資源エネルギー庁の第47回「電力・ガス基本政策小委員会」では、電力需給の最新の見通しと、追加的な供給力確保策等が議論された。

3月16日の福島県沖地震による供給力の変化

 2022年3月16日の福島県沖地震により、東北・東京エリアでは計14基・648万kWの火力発電所が停止した。その多くは既に復旧済みであるが、震源地から近く設備被害の大きかった新地火力1号(100万kW)・2号(100万kW)は現在も停止中であり、復旧の日程については未定となっている。

 事業者(相馬共同火力発電)によれば、2023年1月までに1号・2号のいずれか1台が復旧する可能性があるとのことだが、現時点では供給力としては見込めない状況にある。

 また新地火力の停止は、東北・東京の地域間連系線の運用容量にも影響を与えている。東北東京間連系線では、熱容量限度値と同期安定性限度値の小さい方を運用容量としており、通常は550万kW程度である(月や時間帯等により異なる)。

 一般的に発電所と需要の距離が遠くなるほど双方の電気の波形(位相)がずれやすくなるため、同期安定度が低下する。


図1.電源の停止による東北東京間の運用容量低下 出所:電力広域的運営推進機関

 東北エリア南部に立地する新地火力が停止したことにより、東北の電源バランスは北部寄りとなったため、同期安定性が低下した。このため2023年1月(平日・昼間)の東京向き運用容量は、熱容量では545万kWでありながら、同期安定性の制約により、新地1・2号停止のケースでは419万kW、新地1台運転のケースでは459万kWに運用容量が低下する。

その他電源の停止も供給力の減少に影響

 九州電力の玄海原子力発電所3号(118万kW)・4号(118万kW)は、特定重大事故等対処施設設置工事の状況や工程等を踏まえ、運転計画が変更されたため、2022年10月以降の供給力は大きく減少することとなった。


図2.九州電力 玄海原子力発電所の運転計画変更 出所:電力広域的運営推進機関

 また、電源開発の磯子火力発電所2号(60万kW)は変圧器のトラブルにより3月20日から停止しているため(9月30日復旧予定)、夏季の供給力としては見込むことが出来ない状態である。

JERAは停止予定の発電所を再稼働へ

 JERAは、2022年4月1日から長期計画停止に入っていた袖ケ浦火力発電所1号機(60万kW)を4月18日以降、再稼働させることとした。

 当該電源は2021年12月から広域機関の「発電設備等の情報掲示板」を用いて、電力の購入を希望する小売電気事業者とのマッチングをおこなったが、契約には至らなかった経緯がある。

 しかし2022年3月16日の福島県沖地震の後、小売事業者との再度の協議により、再稼働が実現した。ただし袖ヶ浦1号は、地元漁協との取り決めにより、海水温度上昇対策のため、秋期〜冬期に一部設備を止める必要があるため、冬季の供給力としては見込むことができないとされている。

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