既設の太陽光発電も規制対象に! O&M視点で解説する山梨県新条例への対応ポイント:対応期限の2022年6月30日が迫る!(2/3 ページ)
昨今大きな課題になっている太陽光発電事業における法令順守や、適切なO&Mの実行に関するポイントを解説する本連載。今回は番外編として、山梨県で施行された太陽光発電に関する新条例について、O&Mの視点から詳しく解説します。
新条例における対応のポイント
山梨県の新条例において、具体的に対応しなくてはならない点は、以下のようにまとめられます。
- 山梨県の条例に適した事業計画標識の新規設置
- 既設施設の届出
- 維持管理計画の作成および公表
- 施設の適切な維持管理(点検等)の実施
- 設置規制区域の発電所の維持管理の結果報告書の提出
- 施設撤去前に廃止届出書の提出
- 事故報告を知事に報告
- 条例違反の罰則の制定
FIT法と比べて、事業運営体制を含む維持管理の体制とその内容は、より詳細な計画と実施が求められています。発電所ごとに設置・事業の環境は違いますので、発電事業者及び関係者は必ず、山梨県のWebサイトを確認し、所有する発電所と照らし合わせてください。
また、発電事業者に対しての義務であるため、保守点検者が届出、公表、提出の対象者ではない点にも注意してください。
具体的な対応のポイント
次に、具体的な対応ポイントを、3点に絞って紹介します。
1.標識の設置
新条例で設置が求められている標識は、FIT法とは異なり、独自の表示内容になっていることに注意してください。
【山梨県独自の標識表示内容の主な追加・変更点】
- FIT法の設備ID許可年月日(西暦)
- 発電所事業者、保守管理責任者の名称には企業名と代表者の氏名(法人の場合)
- 発電所の設置場所(代表的な住所)
- 許可年月日と許可番号(設置規制区域外は不要)
- 事業区域の面積(m2)
- 太陽電池の合計出力(小数点以下第1位)
- 事業廃止予定年月日(西暦)
発電事業者は、上記の内容を満たした標識を新規に作成・設置する必要があります。設置場所も公衆の見えやすい場所、標識の材料についても風雨で劣化・風化しないものという指定があるのも、見逃せない注意点です。
私はオンライン説明会にて「FIT法に基づいて正しく設置しており、保安規定を定めて適切に維持管理いる場合でも、新規設置が必要なのか」と質問しましたが、「条例に定める通り、新たに設置してください」という回答でした。
2.既設施設の届出(様式その2:「既存施設の届出書」の提出)
届出は、発電出力10kW以上の場合は2022年(令和4年)6月30日までに、発電出力10kW未満の場合は、2022年(令和4)9月30日までに本県が指定する場所へ提出する必要があります。届出は、事業標識と似た内容で、山梨県が公表している様式ではA4一枚の届出書となっており容易に思われますが、注意点が2つあります。
【既設施設の届け出の注意点】
1.事業区域が設置規制区域かどうかの確認
2.添付書類
―位置図、事業区域図及び配置図
―現況写真
―その他知事が必要と認める書類
1.は設置場所の市町村に問い合わせるなど再調査が必要な場合があります。2.の添付書類は、私がオンライン説明会でいくつか質問し山梨県側から回答をいただいたので、以下でより詳しく解説します。
現況写真について
法令順守(標識、施錠、柵塀)、設備・架台など設備の取付位置が容易に判断できるマッピング付写真が必要です。具体的には、図面などに写真番号を付け、写真と連動できるようにする必要があり、大変手間が掛かる内容となっているので注意してください。
位置図や配置図
私は、この位置図や配置図を最も注意すべきポイントとして危惧しています。その理由は、発電出力50kW未満の事業者の方で、竣工図書を施工会社や販売店から受領されていないケース、間違いや情報不足がある図面も存在するからです。
新条例においてはこうした場合、発電事業者が自力で配置図などの図面を作成する必要があります。施工会社や販売店が廃業しているなどの場合は、発電事業者のみでの対応が大変困難になり、事業者が費用を負担して図面作成をしなくてはならないことが予想されます。図面作成を業者に依頼する場合、現地調査、関係書類、メーカーへの問い合わせなど費用負担が必要で、作成にも時間もかかりますので、納期確認が必要です。万が一、期日に間に合わない場合、山梨県に相談すべきかと思われます。
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