既設の太陽光発電も規制対象に! O&M視点で解説する山梨県新条例への対応ポイント:対応期限の2022年6月30日が迫る!(3/3 ページ)
昨今大きな課題になっている太陽光発電事業における法令順守や、適切なO&Mの実行に関するポイントを解説する本連載。今回は番外編として、山梨県で施行された太陽光発電に関する新条例について、O&Mの視点から詳しく解説します。
3.維持管理計画の作成および公表のポイント
維持管理計画について、普段から電気事業法第42条で定める保安規程やそれに準じて維持管理をされている良好な発電事業者を想定して、おさえるべきポイントをお伝えします。
維持管理計画書に必要な内容
- 維持管理の基本的事項
- 維持管理の実施体制
- 保守点検の内容
- 土砂災害等が発生するおそれがある場合の対応・措置及び実施体制
- 土砂災害等及び地域の保全に支障が発生した際の対応・措置及び実施体制
山梨県の場合、土砂災害等や周辺環境の保全を重要な維持管理の基準としており、維持管理計画書の作成には外せない項目です。
次に、一般的な保安規程とは違う山梨県独自の点がいくつかありますので注意すべき点です。
山梨県独自の規定
- 事故又は土砂災害が発生した場合、本県知事に報告
- 維持管理の実施状況を記録し、5年間保管
- 維持管理計画をインターネット(ホ―ムページなど)やその他(発電所に掲示)で公表
- 設置規制区域などの場合、維持管理の実施報告(4月〜翌年3月)は翌年度5月末日までに提出
- 事故又は土砂災害等は発生日より30日以内に本県指定の様式にて報告
なお、設置規制区域とは以下の対象となっており、注意すべき点です。
- 地域森林計画対象民有林(5条森林)及び国有林等
- 地すべり防止区域
- 急傾斜地崩壊危険区域
- 土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域
- 砂防指定地
参考までに表にまとめると以下の通りになり、設置規制区域内と外では求められる対応が大きく異るのがわかるかと思います。開発済み(土地、発電所付)の太陽光発電所を購入された方などは、必ず発電所の立地が設置規制区域に該当しているかどうかを確認しておく必要があるでしょう。
維持管理に関わる必要事項整理表
維持管理の保守点検項目、方法及び実施頻度
おわりに
山梨県は日本でもトップクラスに厳格な発電所の維持管理が求められる地域となりました。カーボンニュートラルを実現するためには、再生可能エネルギーの導入は不可欠です。しかし、FIT法によって太陽光発電導入の拡大に伴い、残念ながら不適切な発電所が出現しました。このため地域とのトラブルや災害が増大傾向にあることも事実です。
こうした事実に事実に対して地方自治体が動いた点も真摯(しんし)に受け止め、良好な発電所を増やし災害やトラブルを縮小する活動も非常に重要です。筆者自身は、そのためにはより充実したO&M及びその是正が最も重要な対策と考えます。
次回はスマート保安の連載にもどります。では次回をお楽しみにお待ちください。
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著者プロフィール
増田幹弘(マスダ ミキヒロ)
野原ホールディングス株式会社 経営企画部 再生エネルギープロジェクト室長
太陽光発電評価技術者、緑の安全管理士、「東京都農薬指導管理士」
大阪出身、近畿大学卒業。1999年、私費にて参加したエコに関する研究会にて、電気を庭に取り付けた太陽光発電と自動車の大型バッテリーから、給湯は太陽熱を利用するなどの、今でいうゼロエネルギー住宅(奈良県)を視察し感銘を受ける。自宅をオール電化にし屋根には発電システムを取り付け、自宅エネルギー消費データを2年間記録、上記研究会にて発表。その後も省エネ、省資源についての研究を深め、建材の開発、リサイクルシステム、工場のエネルギー消費削減に大きく貢献。
2009年、野原産業(現 野原ホールディングス)に入社。2013年、事業開発部において八ヶ岳研修所の遊休地活用事業として太陽光発電プロジェクトを主幹。現在は、太陽光発電に関わる新事業として、第三者の視点からの太陽光発電設備の保守・点検(O&M)サービス「SUN SUN GUARD 20」を展開。豊富な知識と多様な事例、経験から、太陽光発電事業者向けセミナーにて講師も務める。
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