太陽光発電を目的とした林地開発許可は厳格化へ、複数の基準を見直す方針に:法制度・規制(3/3 ページ)
国内で導入が広がった太陽光発電だが、森林地帯における開発などが防災や周辺環境に与える影響も懸念されている。今後、太陽光発電を目的とした林地開発許可は、厳格化される見通しだ。
施工者の災害対策に関する能力を事前確認する仕組みを導入
林地開発許可を得た事業者がその許可条件に違反する場合、都道府県知事は森林法に基づき、行政指導や監督処分によって対処することとなる。
林地開発における是正措置のうち、行政指導件数の推移を示したものが図6であり、ここでも太陽光発電に関する指導が一定数存在することが分かる。最新の2019年度では行政指導以外に太陽光発電に対して、中止命令が1件、復旧命令が3件、監督処分されている。
また2012〜2020年度の間に、林地開発許可を受けた太陽光発電の施工地の約9%において、工事施工中に土砂流出や濁水などの問題が発生したことが報告されている。
このため、施工中の災害等防止について一層の実効性を担保する観点から、林地開発申請者が災害等防止の措置を取るために必要な能力を有するか否かを、事前に確認する措置を新たに講じることが求められている。
具体的には、都市計画法やFIT法の事例を参考として、林地開発申請者の信用、資力、施工能力等を確認するため、以下の書類の提出を求めることとする。
1.信用及び資力を確認するための書類
- 資金計画書
- 法人の登記簿謄本(個人申請の場合は住民票)
- 事業経歴書
- 納税証明書等
2.施工能力を確認するための書類
- 法人の登記簿謄本
- 事業経歴書
- 建設業の許可証明書 等
また施工中は林地斜面の安定性が低くなり、最も安全率が低い状態となるため、もし何らかの理由により工事が中断すると、その危険な状態が継続することとなってしまう。
このため建築基準法等を参考として、主要な防災施設の完了確認を受けた後でなければ、それ以外の開発行為に着手してはならないことや、中間検査等を実施することを林地開発の許可条件として新たに位置付けることを検討する。
施工完了後の管理
現在、森林法の「森林計画制度」では、林地開発許可に基づく開発行為の「完了検査」が終われば、地域森林計画の対象森林から除外する運用が行われている。
ところが、表土の侵食防止を目的とした緑化等の措置は、工事完成後ただちに効果を発揮するものではないため、緑化措置がうまく定着しない場合には、土砂流出等の被害が発生するおそれがある。
このため、工事施工後1年経過した時点の植生状態を目視や植被率により確認するなど、緑化措置の定着状況を確認したうえで完了判断することとし、不十分と判断される場合には、事業者に対して必要な手直しを実施させることする。
地域の意見を反映できる仕組みを
現在、知事が事業者による林地開発申請を許可する際には、森林法に基づき、市町村長の意見を聴取することとしているが、意見聴取の方法や対応は都道府県によりさまざまである。
本来、林地開発許可制度は災害防止等を目的とした措置であるため、意見聴取の対象は図9の「4つの許可要件」のみが意見聴取の対象とされており、地域の合意形成は許可条件とはされていない。
このため、農山漁村再エネ法や温対法における協議会の活用を事業者に対して促すなど、都道府県と市町村の連携により、地域の円滑な合意形成を図ることとする。
太陽光発電では、FIT調達価格(もしくはFIP基準価格)はすでに10円を下回る水準まで低下しているため、今後は盛土等のコストを要する林地開発を伴う新規案件は減少することが予想される。
ただし、FIT認定を取得しながら未稼働(未着工)の案件も多数存在することから、太陽光発電設置を目的とした林地開発は、今後もしばらく継続すると考えられる。安全性や防災を何よりも優先して、地域住民から歓迎される事業が実施されることを期待したい。
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